2021.02.25
高齢者がリハビリを受ける際に確認すべきこと。リハビリメニューの特徴・効果的なリハビリ体操の紹介まで
入院や介護をきっかけにリハビリが必要になったかたは、これからどんなことをするのか、何か準備をしておくことがあるのかなど、不安なことがあるのではないでしょうか。
リハビリは快適な日常生活を過ごすためのものであり、家族の協力が不可欠です。
そこで今回は、高齢者・シニアがリハビリを実施する前に注意すべきこと、代表的なリハビリメニュー、自宅でできるリハビリについて紹介します。
これらを知っておくことで、専門職のかたからリハビリの説明を受けたときの理解がしやすく、日常生活の中でリハビリとどのように付き合っていくのかがわかりやすくなります。
リハビリはいろいろな種類があるので、目的に合わせた選択と無理なく継続できる計画が重要です。
以下、詳しくみていきましょう。
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1.高齢者がリハビリの実施前に注意すべきこと
リハビリを実施する前に注意すべきことは、目的の整理、全体の把握、無理のない計画です。
これらに注意することでリハビリをスムーズに進めていくことができます。
リハビリの目的を整理する
リハビリを実施する前には、目的を明確にしておくことが大切です。
リハビリの目的を把握しておくことで、なぜリハビリが必要なのか、どのような効果が出れば順調に進んでいるのかを把握できます。
リハビリの目的は、「低下した機能の回復」と「現状の維持、悪化の予防」に大きく分類できます。
前者は入院中や退院直後などに多く、介護保険によってリハビリを受ける場合には予防と維持を目的とすることが多いです。
参考:厚生労働省「介護保険制度の理念」
ほかにも、高齢者リハビリテーションには以下、3つのモデルが提唱されています*1。
1.脳卒中モデル
2.廃用症候群モデル
3.痴呆高齢者モデル3つ
それぞれリハビリの頻度やリハビリに求められる効果がリハビリ期間を通して変化します。
注意したい点は、リハビリの見通しに関する説明です。
リハビリを受けた方からアンケートを取った結果、担当者から説明がなかったという回答が4割とやや多くなっています(*2)。
目的や今度の見通しについて説明がなければ医療者に聞いてみるといいでしょう。
体力アップや筋力増強については、リハビリに加え筋トレを行うことも大変効果的です。
状況に応じて必要なリハビリの種類を把握する
既往症や現在の状態から、取り組み可能なリハビリは違います。
どのようなリハビリがあるのかを知っておくと、リハビリ後のゴールが見えやすくなります。
リハビリの種類は、大きく分けると以下の3つです。
1.筋力や関節の動きなどの基礎能力を取り戻すリハビリ
2.スムーズに日常生活を行うためのリハビリ
3.食事を摂取するためのリハビリ
例えば、筋力はあるが動作がうまくできないかたは、まっすぐに歩けるが方向転換がうまくできないことなどがあり、2のリハビリが重要になります。
また、リハビリに来てもらう訪問リハとリハビリに行く通所リハがあるので、そこも状況に応じた使い分けが必要です。
無理のないリハビリ計画を立てること
リハビリの計画を立てる際には無理なく続けられることが重要です。
標準的な日本人に合わせた決まりきったプログラムを実施すると、本人がリハビリを嫌がる、途中で挫折する可能性があります。
それでは効果も出ません。
本人の身体機能の回復状況や精神の状態に合わせながら、本人が無理なく続けていけるような計画を立てて、随時内容を変えていくことが重要です。
2.高齢者が受ける代表的なリハビリメニュー
リハビリのメニューはリハビリ指導を行う職種によって分類できます。
応用的な動作を行う能力の回復 → 作業療法士
言語と摂食の障害の回復 → 言語聴覚士
それぞれどのようなリハビリを行うのか、具体的に説明します。
理学療法士によるリハビリメニュー
理学療法士によるリハビリは、筋力回復、関節の動きや可動域の改善を行うものです。
リハビリの実施方法には、運動療法と物理療法の2種類があります。
~運動療法の内容~
実際に動いてもらうもので、立つ、座る、起きる、歩行などの基本動作や機能が低下した部分を正常に戻すための訓練です。
例えば、マット上での動きを行う動作訓練や平行棒内で歩く歩行訓練などがあります。
~物理療法の内容~
外部から刺激を加えるものです。
筋肉の痛みがある部分を温めて痛みを緩和する温熱治療や筋力が低下・麻痺している部分に電気刺激を与えて自分で動かせるようにする電気治療などがあります。
作業療法士によるリハビリメニュー
作業療法士によるリハビリは、理学療法士と同様に基本的動作を訓練するものと、能力が回復しない状態でも日常生活へと戻れるように行うものです。
例えば、ものを握って運ぶ動作をするアクリルコーン。
また、折り紙やゲーム、手芸などのリハビリは、応用動作の訓練としてだけでなく心のケアをサポートする側面も担っています。
言語聴覚士によるリハビリメニュー
言語聴覚士によるリハビリは、言語によるコミュニケーション能力の回復と食事を食べる能力の回復です。
脳卒中に代表される脳血管障害の後遺症による言語障害には、状態に合わせてジェスチャーを使ったコミュニケーションや音読などを行います。
食事能力のリハビリでは、食べ物を使わずに嚥下機能(ものを飲み込む力)を高め、食べている様子を観察して食べられる形状を調整します。
例えば、呼吸訓練は嚥下機能を高める訓練のひとつです。
3.リハビリグッズ、折り紙に体操!~高齢者が自分でできるリハビリ~
ここでは自宅にいながら自分でできるリハビリを3つ紹介します。
目的に合わせて取り入れてみてください。
1.リハビリグッズを活用したリハビリ
リハビリグッズを活用することで、安全に効果的に体を動かすリハビリを行うことができます。
例えば、座りながら足の運動ができるステップ。
座りながらリハビリができ、退院後で体力が完全に回復していないかたや、継続的に歩行訓練が必要なかたも、グッズを使うことで毎日リハビリを効果的に行えます。
2.折り紙を使ったリハビリ
折り紙には認知症予防効果と手や指を動かすリハビリの効果があります。
いろいろな形が作れるので、難易度を調整して楽しみながら継続することができます。
例えば、手や指がうまく動かせない方には簡単な箱、認知症予防には季節やイベントに合わせたものなどいろいろな形を折ることで、目的に合わせたリハビリが可能です。
このような趣味的なリハビリを取り入れることで、セルフケア能力が向上したという事例も報告されています(*3)。
3.動画を見ながら行うリハビリ体操
動画は実際の動きを見ながらできるので、ひとりでも正しい動きで効果的なリハビリをすることができます。
高齢者が気を付けたい転倒の予防ができる体操です。
足踏みや膝伸ばし、かかとあげなど、足のいろいろな部分をスムーズに動かす体操がコンパクトに詰まっています。
足の関節を柔らかくしたり、筋力を維持したいかたにぴったりです。
全国の自治体がご当地体操動画を制作しています。
お住まいの市町村の動画があるかチェックしてみてください!
ご当地体操マップ
4.介護施設でも専門性の高いリハビリを受けることができます
リハビリといえば病院というイメージの方もいらっしゃるかもしれませんが、介護施設でも専門性の高いリハビリを受けることができます。
専門性の高いリハビリを特徴としている介護施設には、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門家が在籍しているからです。
介護施設であれば、生活の動作ひとつひとつをリハビリと捉えた生活リハビリも積極的に導入して評価ができるので、生活全体を通してリハビリを行うことができます。
目的や状況に合わせて、リハビリに力を入れている介護施設も選択肢のひとつにしてみてはいかがでしょうか。
是非参考にしてみてください!
*1厚生労働省「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigi/040219/sankou28.html
*2厚生労働省「高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000081253.pdf
*3 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌「生活機能向上につながる効果的な訓練手法の一考察」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyushuptot/2009/0/2009_0_119/_article/-char/ja/