2020.12.01
【業界歴10年のプロが語る】介護職の仕事といい介護施設の選び方とは
はじめまして!
前川たけしと申します。
今回は、「働く介護職」の目線から、「介護職について」「介護施設での暮らしについて」書いてみようと思います。
プロフィール
これまで介護職や介護施設の管理職、研修講師などを経験してきました。
今現在は、フリーランスとして、介護現場にて介護福祉士として仕事をしたり、介護の資格取得のための研修講師、研修動画制作、介護施設のアドバイザー、介護周辺機器のシステム開発メーカーのアドバイザーなどをしています。
介護が大好きで自分に向いていると感じていて、10年ほど続けていますが、アレコレ興味を持つようになり職種が増えている現状です。
介護施設を検討されている方にとって、施設で入居者さんを支えるスタッフが、どんな人たちなのかは、とても気になることかと思います。
穏やかな老後の生活を伴走してくれるパートナーは、たとえ建物などが立派であっても、あくまでスタッフです。どんな人がいるのかは大きな関心事であると思います。
以下、詳しく意見を述べていきます。
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1. 介護職ってどんな仕事?
介護の仕事は、資格がなくても部分的に従事することができます。
身体介護と言いまして、食事の介助、排泄の介助など直接入居者の身体に触れる仕事は基本的に資格を持ったスタッフが対応していますが、清掃、シーツ交換、配膳下膳など介護の補助的仕事をすることは可能です。
介護職の資格としては、国家資格である介護福祉士、それ以外にも初任者研修、昔からあるヘルパー2級などがあり、介護現場では様々な資格を持ったスタッフが一緒に仕事をしています。
資格の違いによって、任される仕事が違うということはありません。介護福祉士でもヘルパー2級でも、同じ仕事をしています。
どの資格を持っているかによって、学んだ知識が違うのはもちろんなのですが、実際の介護職としてのスキルに差があるのかというと、ヘルパー2級しか持っていなくても、細かいことにもよく気付く「観察力の鬼」のような人もいるし、介護福祉士を持っているけど、入居者から信頼されないような人がいたりもします。
つまり資格が何かというより、「人による」という印象です。
では、どうやって介護職の善し悪しを判断すればいいのでしょうか。
2. 介護職の善し悪し
まずはなんといっても人柄でしょう。
介護は生活をサポートする仕事です。一日の生活の中で側にいるのがどんな人か。信頼できる人でなかったら、辛いものがあります。
しかし読者の皆様への安心材料としては、介護職の人は「優しい人」が多いです。
感覚としても感じますが、裏付けとしては、介護職を始めようと思った理由を尋ねたアンケーを見ても「働きがい」を感じて始める方が多く、「役に立ちたい」「お年寄りが好き」という人も多いことからも、優しさを秘めていることは感じられます。
*出典元:(公財)介護労働安定センター 平成26年度介護労働実態調査「介護労働の現状について」
介護職の初任者研修などの教育場面では「利用者本位(利用者ファースト)」「自立支援」を軸に教育しています。
入居者がどうしたいのか、からスタートし、入居者自身ができることはご自分でできるように支援する、ということです。
もともと「やさしさ」をベースに持っている人が、「お年寄りのために」という視点で介護を学ぶことは、現場での実践の際には「やさしさ」プラス「相手目線」と「知識」が入るので、いい介護職の素地を作ることにつながっているのではないかと考えています。
高齢者のことを理解し、寄り添おうとする。
その姿勢こそ大切で、忙しく動いている介護職の方が、話を聴こうという姿勢をみせてくれるなら、とてもいい介護職であると言えます。
共感を示していくことは介護職として大切なスキルです。それにより入居者は「わかってもらえた」とか「話を聴いてくれる」という安心感を覚えて下さいます。
とはいえ、話を聴くだけでは入居者を幸せにはできません。
介護サービスを受ける高齢者は、生活に支障があるからサービスを利用しています。元気なお年寄りは、そもそも利用者にはならないので、介護サービスを利用することなく、ご自分の生活を継続される方が多いです。
介護施設に入居される方は、自立型の施設などでなければ、介護が必要な状態の方が主に入居されます。
要介護者と言いますが、その状態の方というのは、体調が急変する可能性や転倒事故などの可能性も多くあります。
そんな急変時には、やさしいだけではオロオロして何もできません。
やはり知識や技術、周りと連携する力も必要になってきます。
そしてこれらの力は、現場で経験するうちにつけていくものです。
もし読者の皆様が心配でも、高齢者の入居施設では看護師などが所属していることが殆どですので、周りが助けてくれます。
介護はチームで対応していきますので、この「お互いに助け合うような風土」が、その施設にあるのか。
これこそが入居者の生活の質を上げる為には大事なポイントではないかと私は考えています。
3.いい介護施設とは
スタッフ同士が助け合うような風土。
これがあるかないかでは、施設の雰囲気が違うと思います。
そしてこの風土はどのようにして作られるのか。
それは施設としての方針が決まっているかどうかや、施設の長や現場のリーダーの人たちの考え方によって大きく左右されます。
スポーツの世界でも監督が代わるとチームが強くなることなどもありますが、やはり旗振り役の人が、どんな哲学を持っているのかで、施設の空気は変わります。
人が関わる介護の現場は、人が作っているということです。
介護施設を管理するということは、どのような視点を持っているのでしょうか。
介護職の方はやさしい人が多いという話をしました。
入居者と関わることが多いので、入居者目線に寄りやすい。
しかし管理する立場の人はというと、施設全体のリスク管理という視点も持ちます。
事故があれば、最悪の場合訴訟のリスクもあります。
重大事故は行政への報告なども必要なので、施設運営としてのリスクにもなりうる。介護事業所というのは、入居者本位とリスク管理のバランスを日々模索しているような感じです。
そのバランスを取るなかで、リスク管理に重きを置き過ぎると、入居者の生活は制限が増えて窮屈になっていきます。
生活を管理して、入居者の自由がなくなれば事故のリスクは減るからです。
そしてそのような方針だと、介護職の人たちは本来「やりがい」を感じたいのに、その「やりがい」も制限されてしまいます。
とはいえ、複数の介護が必要な入居者を観ているわけなので、リスク管理は必要なことです。
自由に野放しで事故や急変が続出では本末転倒です。
事業所と入居者や家族の方と、それぞれこの「自由と管理」のバランスをどのように考えているか。
双方が向き合って話をしておくことは、安心して入居生活を送るためにも重要なポイントかと思います。
その場面で、相手の人に話を聴く姿勢があるのか。
この点はしっかり観ておく必要があるかと思います。
4. まとめ
人と人が関わる介護の現場では、どんな人がいるのかは重要なポイントです。
介護人材の教育にも関わる私としては、一人でも多く、安心感を与えられるような介護職の方を育てていきたいと思います。
やりがいがあり、将来性がある仕事です。
「介護職の面白さや魅力」、「入居者との関わり合い」については、また改めて紹介できればと思います。