2021.02.15
高齢者が転倒してしまったら…対応方法から、予防、注意すべき後遺症まで紹介!
高齢になると筋力やバランス感覚の衰えで転倒を起こしやすくなる、ということは分かっていても、いざその場面に出会うと、驚いたり焦ったりしてしまうことでしょう。
高齢者の転倒は重症化しやすく、適切な対応をしなければ寝たきりになる可能性もあるなど、その後の生活に大きな影響を与えてしまいます。
高齢者の転倒を発見したとき、どう対応したらいいか。詳しく解説していきます。
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1.どうしたらいい?高齢者が転倒したときの対応
高齢者の救急鵜搬送で最も多いのが「転倒・転落」で、東京消防庁のデータによると8割を占めています(図1)。
転倒・転落 | ものが詰まる等 | ぶつかる | おぼれる | 切る・刺さる | |
緊急搬送者数(人) | 58,351 | 1,703 | 535 | 533 | 323 |
中等症以上の割合 | 40,1% | 52,3% | 20,0% | 99,3% | 16,4% |
図1救急要請された高齢者の事故の発生傾向
(「高齢者の事故の状況について」消費者庁より作成)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/pdf/caution_009_180912_0002.pdfp5
また、転倒・転落で救急搬送された人のうち、4割が「中等症」(=生命の危険はないが、入院を要する)状態になっています。
高齢者の転倒はどこでも起きる可能性があります。見つけた時の対応を紹介していきます。
転倒を発見したら
転倒して自分で起き上がれない、という場合、最も多いのは大腿骨の骨折とされています。
初動では骨折している可能性を念頭に置いて対応する必要があります。
まず、意識の有無を確認すること、気持ちを落ち着かせる声かけをしながら痛みや吐き気などがないか状況の確認をしていきましょう。転倒でショックを受けたり気が動転したりしていますので、落ち着いた対応を心がけてください。
しばらくは動かさず、そのままの姿勢で、どのようにして転んだのかなどゆっくりと話を聞きましょう。
受傷者の状況に応じて対応する
東京福祉保健局が推奨する*1対応方法をご紹介します。
以下のようなときは、骨折を疑います。
・はれ、変形がある
・動かすとさらに痛い
・骨が飛び出している
すぐに救急車を呼んだほうがいい場合
大腿骨の骨折と判断した場合は速やかに救急車を呼びましょう。
特に、骨折時に体内で出血したことで起きる「出血性ショック」は命に関わる緊急性があります。
出血性ショックには、以下のような特徴があります。
・冷や汗をかく(冷汗)
・ぐったり、ぼんやりしている(虚脱)
・脈が速く弱くなる(微弱な連脈)
・呼吸が速くなる(呼吸連拍)など
そして、普段通りの呼吸がない場合は心配蘇生を実施する必要があります。
胸骨圧迫→人工呼吸→AEDの一連の手順を踏みましょう。
救急車を呼んだ後も、到着までは様子をしっかり観察してください。
なお、救急車を呼ぶべきか迷ったときは、地域によっては「#7119」に電話をして相談できます。
医療機関が見つからない場合にもアドバイスをもらえますし、必要な場合は119に転送してくれます。
また、救急車を呼ぶほどでもない、という場合には、民間救急の利用も検討しましょう。
2.高齢者の転倒後に注意すべき代表的な症状・後遺症
高齢者の転倒は、その場で負った怪我の治療だけでは終わらない場合が多くあります。
特に以下の場合、長期のケアが必要です。
頭部の打撲
頭部の打撲は重大な体の症状につながりますが、外見にはわかりにくい場合が多くありますので、早めに医療機関で検査を受けましょう。
その場ですぐに影響が出ない、あるいは初期の検査で異常が見つからなくても、慎重に経過を観察する必要があります。
頭部の打撲で出血が起きている可能性があります。
頭の中の血管が切れて血が溜まり脳を圧迫していく硬膜下血腫の場合は、のちになって突然意識を失うこともあります。
また、麻痺やけいれん発作にもつながります。
高血圧などの治療・服薬で出血が止まりにくくなっている高齢者もいることにも注意が必要です。ろれつが回らない、吐き気を訴える、など普段と違う様子がある場合は要注意です。
骨折
高齢者の場合、骨粗しょう症で骨がもろくなっている人も多くいますので、骨折のリスクは非常に高いといえます。
特に大腿骨の骨折は手術が必要なだけでなく、その後寝たきりになる可能性が非常に高い部位です。先に紹介した「出血性ショック」のリスクも高まります。
また、入院や寝たきりの生活は体力の低下だけでなく、心理的にも悪影響を及ぼし、うつ病などに繋がることもありますので、精神的なケアも必要です。
3.高齢者が繰り返してしまう転倒(転倒後症候群)の予防
転倒を繰り返す高齢者は少なくありません。
そのぶん怪我のリスクも高まるだけでなく、自信を失って外出や移動を怖がるために活動が制限される「転倒後症候群」に陥ることがあります。
転倒歴の分析
転倒経験者の70%以上は再び転倒のリスク
注目したいのが「転倒歴」です。
過去1年で転んだ経験のある人は、その後1年間で70%以上が再び転倒する危険性があります*2。
理由は様々ですが、その人独特の事情を抱えていることがありますので、どのような転倒歴があるかを知り、分析することは予防のために重要です。
~Aさんのケース~
そこで、廊下に入る光をカーテンで遮るようにしたところ、周囲のものに気付きやすくなったという事例があります。
他には、「夜間に電気のスイッチを探しているうちにバランスを崩した」場合はスイッチの周辺に蛍光テープを貼ってわかりやすくする、などの対策も考えられます。
また、転倒の理由から麻痺など他の病気が見つかることもあります。
4.まとめ
ここまで高齢者の転倒とその後の状況についてみてきました。
高齢者の転倒は、心身に大きな影響を与えてしまいます。「自分はまだ大丈夫」と思っていた人ほど大きなショックを受けますし、見つけてもらえるまでは心細いものです。
よって、発見時にはまず発見者自身が落ち着き、穏やかに接することができるようにしましょう。
そして責めることなく、なぜ転倒したのかをゆっくりと共に考え、今後の対策につなげましょう。
転倒がきっかけで体の病気が見つかることもありますので、経過観察は欠かせません。
今回の記事では、転倒が実際に起こってしまったあとの対応方法や注意点について解説しました。
転倒の原因や、転倒がよく発生する場所に関する情報も合わせて確認してみてください。
以下の記事で詳しく解説しております!
*1「高齢者の骨折シーン1 祖母が転んで、動けない!」東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/inavi/junior/s01.html#01
*2「転倒予防手帳」国立長寿医療研究センター
https://www.ncgg.go.jp/hospital/news/documents/yobotecho2017.pdf p4