2021.03.02
立ち上がれない…高齢者の立ち上がりが困難になる原因と対処法を解説!
高齢者介護の悩みで多く聞かれるのが、湯船や椅子から自力で立ち上がれなくなってしまった、という悩みです。
一度立てなくなると寝たきりになるのでは、と心配して無理に立たせようとするご家族も多いのですが、無理に立たせて転んでしまった結果、骨折してしまうケースも多いです。
高齢者は一度骨折などで動けなくなると、そのまま寝たきりになってしまう恐れもあります。
今回は、高齢者にとって立ち上がりが難しくなる原因と、立ち上がりを安定させるための方法を、トレーニングの観点、器具を活用する観点に分けて解説します。
立ち上がれない原因と正しい対策を理解することで、転倒事故や寝たきりを防ぎ、できるだけ長く自分の足で歩くことができるようになります。
正しい知識を身につけ、少しでもトレーニングを続けることで、自力で立ち上がれる期間が延び、介護する側・される側の両方に大きなメリットがあります。
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1.立ち上がりが難しくなった高齢者が転倒や寝たきりに注意すべき理由
立ち上がりが難しくなった高齢者を介護している方は、「このまま寝たきりになったらどうしよう?」という不安から、高齢者を無理に立ち上がらせることも少なくありません。
これはとても危険な行為です。無理やり立たせようとすると転んで骨を折ったり、痛みで起き上がれなくなり、逆効果となります。
高齢者にとってはたった一度の転倒が命に影響を及ぼすこともあり、大変危険です。
➡高齢者の転倒原因を知る~たった一度の転倒が命に影響を及ぼすことも~
逆に「いくら言っても立ち上がらないから」と寝床に放っておくことは、そのまま寝たきりとなる可能性が高く、おすすめできません。
無理な立ち上がりによる転倒誘発のリスク
立ち上がりが難しくなったことには必ず理由があります。
その理由を確かめないまま強引に立ち上がらせようとすると、身体を支えきれずに転んでしまいます。
高齢者は骨が脆くなっており(骨粗鬆症)、カーペットの上で軽くつまずくだけで骨折することがあります。
骨が折れていなくても、打ち身の痛みでベッドから起き上がれなくなり、そのまま寝たきりになる危険性も十分あるのです。
立ち上がれない状態が続くことで、廃用症候群にかかってしまうことも
立ち上がれない状況を放っておくのも良くありません。
自分で身体を動かすことがなくなる結果、筋力が低下し、廃用症候群にかかる恐れがあります。
廃用症候群とは、「疾患などのために活動性や運動量の低下した安静状態が続くことで全身の臓器に生じる二次的障害の総称」です。
廃用症候群の症状としては筋肉がさらにやせ衰えたり(筋萎縮)、関節が固まって動きが悪くなったり(拘縮)します。
さらに、ものを飲み込む筋肉まで衰えてしまうと、誤嚥性肺炎を起こし、死に至ることすらあり得ます。
もともと食べ物や飲み物を飲み込む力が弱くなっている高齢者にとって、むせやこみや、食事がうまく飲み込めなくなることは大変危険です。
➡嚥下障害の関係性と食事がうまく飲み込めない原因を解説
また一度廃用症候群にかかってしまうと、そのまま寝たきりとなり、元の通りに改善させることは非常に困難です。
廃用症候群に関しては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、合わせて参考にしてください。
➡廃用症候群とは?寝たきりになってしまう原因と予防方法を正しく理解しよう!
2.湯舟や椅子、ベッド…高齢者が立ち上がりに問題を抱える原因
高齢者が立ち上がりに問題を抱える原因には、身体側の原因と環境側の原因があります。
身体側の原因
身体側の原因は主に二つに分かれます。
1.認知症や脳・神経の病気、または骨折などによるもの
例えば、「昨日までは普通に立てていたが、今朝になって突然立ち上がりができなくなっていた」などといった急な経過を取る場合には、認知症や脳・神経の病気、または足や腰などの骨折などの可能性があります。
この場合、早めに受診することが重要です。
2.ロコモティブシンドロームによるもの
少しずつ、徐々に立ち上がりが悪くなった場合には、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の可能性が高いです。
ロコモとは「移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態」のことを言います。
より具体的には、年齢とともに骨・関節・筋肉・神経などの運動器の働きが衰え、立ったり座ったりするための身体能力が落ちている状態を指します。
加齢が大きな要因となるので、完全に元の状態にすることは難しいですが、食事から摂取する栄養に気を配ったり、リハビリを取り入れるで、今ある運動機能をできるだけ長く維持することが可能です。
高齢者が摂取したい栄養やリハビリにつきましては、以下の記事も合わせてご覧ください。
➡摂取したい栄養とおすすめの献立、食事量の目安を解説!
➡高齢者がリハビリを受ける際に確認すべきこと。リハビリメニューの特徴・効果的なリハビリ体操の紹介まで
湯舟や椅子、ベッドなど、環境側の原因
高齢者がうまく立ち上がれないもう一つの原因は、湯舟や椅子、ベッドなどの家具を含めた環境側の要因があります。
高齢者の立ち上がりには以下の特徴が見受けられます。
・身体の重心をゆっくり前に移動させる。
ですので、家具の配置の問題などで前方にスペースがなく、重心移動がうまくできないと、高齢者はうまく立ち上がることができません。
さらに筋力が落ちているので、バランスをうまくとることができません。
適切な支えがないと、お尻を持ち上げるときにバランスを崩して転んでしまうのです。
3.立ち上がりやすい身体を作るための方法
立ち上がりやすい身体を作るには、正しいトレーニングが必要です。
最近は介護保険を利用しデイサービスでリハビリを受けている方も多いですが、自宅でもできる簡単なトレーニングをご紹介いたします。
正しい立ち上がりトレーニングを行う
立ち上がりに必要なのは、太ももの筋肉です。
椅子に座ったまま、ここを重点的に鍛えます。
自宅でできる立ち上がりトレーニング
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椅子に浅く腰掛けます。
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腰を落とさず、おへそを少し前に出す要領で、背筋を伸ばします。
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足を肩幅くらいに軽く開き、自分の側に少し引き寄せます。
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両足の裏に均等に体重を乗せながら、ゆっくりと体を前に倒します。
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そのままゆっくりと立ち上がります。
トレーニングのポイント
・トレーニングの際には、前方に十分なスペースを確保しましょう。
・前方に重心を移動させることが、スムーズな立ち上がりのポイントとなります。
・バランスを崩して転倒する可能性があるので、家族の方が見守ると良いでしょう。
4.器具やクッションの使用も効果的な対処法
高齢者に立ち上がりトレーニングを行うのはとても有効なことですが、効果が次の日すぐに出るというものではありません。
トレーニングを行いつつ、立ち上がりを補助する器具やクッションなどを利用することで、今よりも安全に立ち上がり動作を行うことが可能です。
立ち上がりを補助する器具
高齢者の立ち上がりを補助するため、手すりなどがついた椅子などが市販されています。
体格と筋力に合ったものを選びましょう。
また、ベッドやポータブルトイレに取り付け可能な手すりもたくさんあります。
リハビリに通っている方は、担当の理学療法士に相談してみると良いでしょう。
立ち上がりを楽にするクッションの活用方法
まだ専用の器具を購入するほどではない、という場合は椅子にクッションを敷いてみるのもおすすめです。
座面が膝から下の足の長さより同じかほんの少し高いくらいの方が、身体を少し起こしやすくなり、立ち上がりの際の労力が少し減ります。
5.まとめ
~今すぐできることから始めよう~
ここまで、高齢者が立ち上がれなくなる原因やその対処法について、わかりやすく解説しました。
ほんの少しの工夫で、高齢者の立ち上がりは見違えるほど改善します。
できるものから今すぐ始めてみてください。
立ち上がれなくなったり、身体を動かすことが少なくなる高齢者は、喉の渇きを感じにくく、水分補給を忘れてしまいがち。
脱水症状は本人の自覚症状ない場合もあり、見過ごされていることも多くあります。
脱水症状の危険性と対策について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事を参考にしてみてください。