2021.05.10
【グラフで解説】介護付き有料老人ホームの費用
「この頃親の老いが進み、これ以上一人暮らしをさせるのは心配だけど、介護付き有料老人ホームは高額だから我が家の経済状況では入居させてあげられない」とお悩みの方が増えています。
では、本当に全ての介護付き有料老人ホームが高額な入居費用を必要とし、一般庶民には手が届かないものなのでしょうか?
この記事では、介護付き有料老人ホームへの入居にかかる費用の仕組みや相場を、初期費用と月額費用に分けてご説明いたします。
さらに、それぞれの費用プランの特徴や費用に差がある理由、費用負担を抑えるコツなど、介護付き有料老人ホームへの入居をスムーズに進めるために押さえておきたい費用面のポイントを解説します。
この記事を読めば、介護付き有料老人ホームの費用についての全てがわかります。
ぜひじっくり読んでいただき、今後の人生設計の参考にしてみてください。
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1.介護付き有料老人ホームへの入居にかかる費用相場
介護付き老人ホームへの入居にかかる費用は、「入居時にかかる費用(入居時費用・初期費用)」と「入居した後に毎月かかる費用(月額費用)」の2つに分けられます。
費用の相場は、費用の支払い方法や施設の充実度・立地など、条件によって大きく異なります。
初期費用がかかる場合の平均額は540万円ですが、実際には1000万円を超える施設と100万円以下の施設に二分されています。
月額費用の平均額は入居時費用がある施設で23.1万円、入居時費用がない施設で20万円となっています。
いずれの場合も月額10万円以下の費用負担で入居できる施設はほぼないのが現状です。
2.介護付き有料老人ホームの初期費用(入居一時金)
介護付き有料老人ホームの初期費用(入居一時金)とは、すなわち前払い家賃のことです。
入居一時金があるタイプの施設の場合、想定される入居期間分の家賃を入居時に一括で支払います。
想定される入居期間とは、その施設にどのくらいの期間居住するかの目安となる期間のことです。
法律で決まった期間があるというわけではなく、施設ごとに平均の入居期間や平均余命などのデータをもとに計算しています。
介護付き有料老人ホームの場合は想定入居期間を5年前後と定めている施設が多いです。
入居一時金と月額費用は、相関関係にあります。
入居一時金が高い施設は毎月の家賃の負担がない分、月額費用が安く済みます。
逆に入居一時金が安い、もしくはかからない施設の場合、月額費用に加えて家賃分を毎月支払う必要があります。
したがって月々の支払いが高額となります。
入居一時金は、あくまでも推定入居期間の間の家賃という位置付けとなりますので、推定入居期間よりも早く退去した場合は、使用しなかった分の家賃相当分が返還金として手元に戻ります。
当然、入居期間が長くなるほど返還金の額は減少し、推定入居期間が過ぎれば返還金はゼロとなります。
ちなみに入居から90日以内とごく早期に退去した場合は、クーリングオフ制度が適用されます。初期償却分も含め、入居していた日数分の利用費以外の全額が返金されます。
3.初期費用の償却とは?
介護付き有料老人ホームの費用で最もわかりにくい点が、償却(しょうきゃく)という考え方です。
償却とは、入居一時金から月々の家賃分としてお金を差し引くことを言います。
初期費用の償却とは、入居時点で納めた初期費用(入居一時金)から一定額を差し引くことを指します。
初期償却率は、入居一時金のうちおおむね10~30%程度としている施設が多いです。
初期償却で差し引かれたお金は、1年目の家賃や入居期間が想定よりも長くなった時のための予備費などとして利用されています。
以前は初期償却分を礼金や権利金などとして利用している施設も多かったのですが、現在は老人福祉法の改正により、家賃やサービス利用費以外の用途として利用することは認められていません。
また、初期償却そのものについても認めないとする自治体が増えています。
・ 初期償却の例
初期償却があり、それ以降の償却は年単位で行う施設の例を示します。
入居時に支払った入居一時金500万円、初期償却率30%の施設の場合、入居時点で初期償却分として施設が150万円を差し引きます。
残った入居一時金の額は350万円です。
1年間の家賃相当分(償却分)を50万円と設定されている場合、残りの入居一時金から毎年50万円ずつが差し引かれます。
例えば2年目で退去した場合、350万円-(50万円×2=100万円)=250万円が返還されます。
・ 初期償却がある場合の償却方法
初期償却後の残額を想定入居期間(月数)で割った額が、入居一時金から毎月差し引かれます。
・残額を年ごとに均等償却する
初期償却後の残額を想定入居期間(年数)で割った額が、毎年契約月に入居一時金から差し引かれます。
・ 初期償却がない場合の償却方法
・毎月型
入居一時金を推定入居期間の月数で割った額が、入居一時金から毎月差し引かれます。
・毎年型
入居一時金を推定入居期間の月数で割った額×12が、毎年契約月に入居一時金から差し引かれます。
・ 償却に関するチェックポイント
入居一時金の返還については、退去時に大きなトラブルとなることがあります。
その多くは、償却に関する事柄です。入居を検討するときに、償却については以下の点を中心に確認を行いましょう。
・初期償却がある場合は償却率(施設の取り分がどのくらいか)
・償却期間は何年か
・償却の方法(月数または年数その他)
・償却期間内に退去した時の返還額
・入居一時金の保全措置はあるのか
4.介護付き有料老人ホームのプラン
(ドーミーときわ台の料金例)
介護付き有料老人ホームでは、それぞれの方の資産状況やニーズに合わせてさまざまなプランを用意しています。
上の例はとある介護付き有料老人ホームの入居費用の料金プランですが、基本プランに加え、月々の支払いを抑えたい方、初期費用を抑えたい方に向けて最適なプランが用意されています。
・ 0円プラン
「0円プラン」とは、入居一時金が0円、つまり全くかからないプランのことです。
入居時にまとまった金額を用意する必要がないため、そもそも財産がない、もしくはすぐに換金できる資産がない場合に利用されます。
突然介護が必要になって入居を検討するというときにも便利です。
その反面、本来は入居一時金として払い込んでいるはずの家賃を毎月少しずつ支払う必要があるため、月額費用は高額となります。
長く入居すると、結局は入居一時金を支払った方が得となる場合もあるため注意が必要です。
・ プランの選び方
どのプランを選ぶと得をするかは、施設で定める推定居住年数と実際に予測される入居年数によって決まります。
入居一時金を支払うと、入居時の負担は重くなりますが、月額費用を安く抑えることができます。
推定入居期間より長く住んだ場合でも追加家賃の支払いなどは不要で、基本的にはご逝去されるまで済み続けることが可能です。
その反面、施設に馴染めない、入居後すぐに亡くなったもしくは大病をして入院したなどの理由で早期退所となった場合、クーリングオフ対象期間(90日)を過ぎた後は、初期償却分は返還されません。
0円プランを利用すると、入居時にまとまった金額を払い込む必要がないので気軽に入居を検討できるのがメリットですが、その反面、月額費用は高額となります。
住む期間に応じて家賃を払い込むことになるため、長く住むと最終的に入居一時金を払うよりも高くつく可能性があります。
プランの組み方にもよりますが、一般的には、推定居住年数よりも長く入居する予定の場合は、入居一時金を高くし月額費用を抑えるように設定した方が得です。
5.介護付き有料老人ホーム賃料の支払い方式
介護付き有料老人ホームの入居にかかる費用のうち、高い割合を占めるのが賃料に相当する部分です。
賃料の支払い方式には以下のようなものがあります。
・ 一時金方式(全額前払い方式)
平均余命などのデータをもとに想定される入居期間の賃料の全額を、入居時に一括で支払います。月々の賃料の支払いはありません。想定よりも入居期間が長くなっても追加の賃料の支払いは必要ありません。
・月払い方式
入居期間中の賃料を毎月払います。入居時の一時金の支払いはありません。入居時の金銭的な負担が少ない分、家賃の分だけ一時金方式よりも月額費用が高額になります。
・併用方式
一時金方式と月払い方式を併用するやり方です。一時金方式と同様の計算方法で想定入居期間の賃料の総額を計算し、その一部を入居時に支払います。前払いし切れなかった分の家賃は、入居期間中に毎月払い込みます。
6.介護付き有料老人ホームの月額費用
介護付き有料老人ホームでかかる月々の支払い額には、施設へ支払う月額費用と個人で支払う費用の2種類があります。
・施設介護サービス費
介護付き有料老人ホームで施設スタッフから入浴、排せつ、食事の介助などの介護を受ける分の費用を「施設介護サービス費」と言います。
介護保険が適用されるため、実際の自己負担の額は要介護度と所得によって異なります。
入居者は介護保険の自己負担分として、施設介護サービス費の1割(所得によっては2~3割)に当たる金額を負担します。
・追加でかかるサービス費用(横出しサービス費)
介護保険制度とは関係なく、オプションで提供されるサービスのことを「横出しサービス」と言います。
介護保険で決められた以上のサービスとなるため、全額自己負担となります。例えば規定回数以上の通院時の付き添い、買い物の代行などが該当します。
・上乗せサービス費
介護保険による規定以上の手厚い介護サービスのことを「上乗せサービス」と呼んでいます。
例えば、人員配置規定以上の人数の介護職員を配置しているケース、介護保険の利用限度額の上限を超えて介護サービスの提供を受けるケースなどが該当します。
こちらも介護保険で決められた以上のサービスとなるため、全額自己負担です。
・家賃
一時金方式(全額前払い方式)はかかりません。
・食費
月々定額の食費を払う施設もあれば、1食当たりの金額×食べた数を支払う施設もあります。
・電気ガス水道費
施設によっては予め定められた金額を毎月定額で納めます。
使用した分だけ自分で支払う場合もあります。施設によって大きな差が出る部分でもあります。
・管理運営費
事務管理や生活支援サービスなどの人件費、施設維持管理費などです。
・電話代
施設の電話を利用した場合にかかる電話代は、個人負担となります。
・理美容費
施設に理美容師がいる場合も、ヘアカットなどをお願いすれば実費を支払います。
・おむつ代
特別養護老人ホームや介護老人保健福祉施設では介護サービス費に含まれていますが、介護付き有料老人ホームの場合は個人負担となります。
・医療費
入居中にかかる医療費は医療保険を使用し、入居者が医療機関に直接支払います。
・レクリエーション費
ホームで特別なイベント(例えば小旅行や遠足、クリスマスパーティーなど)などを行う場合は、別途参加費がかかることがあります。
・介護保険外サービス費
行政手続きや買い物などの代行、外出時の付き添いなどの費用が含まれます。
施設によっては横出しサービス費として施設へ支払う場合もあります。
・嗜好品
コーヒーや紅茶、お菓子、たばこ、アルコール類などが許可されている施設の場合は、当然自分でこれらの費用を支払います。
・電話代
施設の電話を利用した場合にかかる電話代は、個人負担となります。
・理美容費
施設に理美容師がいる場合も、ヘアカットなどをお願いすれば実費を支払います。
・おむつ代
特別養護老人ホームや介護老人保健福祉施設では介護サービス費に含まれていますが、介護付き有料老人ホームの場合は個人負担となります。
・医療費
入居中にかかる医療費は、入居者が医療機関に直接支払います。
・レクリエーション費
ホームで特別なイベント(例えば小旅行や遠足、クリスマスパーティーなど)などを行う場合は、別途参加費がかかることが多いです。
・介護保険外サービス費
行政手続きや買い物などの代行、外出時の付き添いなどの費用が含まれます。
施設によっては横出しサービス費として施設へ支払う場合もあります。
・嗜好品
コーヒーや紅茶、お菓子、たばこ、アルコール類などが許可されている施設の場合は、自己負担となります。
※たばこは吸える場所がないところもありますので確認しましょう。
介護付き有料老人ホームの費用例
では、介護付き有料老人ホームへ入居するには実際にどのくらいの費用がかかるのかの概算をお示しします。
一般的なホームの費用例 | ||
入居一時金 | 324万円 | |
介護サービス費 | 1万6,080円 | |
居住費 | 3万円 | |
食費 | 5万8,000円 | |
管理費 | 5万5,000円 | |
その他の費用 | 2万2,000円 | |
月額費用合計 | 18万1,080円 |
実際の費用にはかなり幅がありますが、一般的な設備の整ったホームであれば、上記の費用感をもとに予算を検討するとよいでしょう。
7.介護付き有料老人ホーム費用感に開きがある理由
一言で介護付き有料老人ホームといっても、施設によって必要な費用が大きく異なることがわかります。
どうして必要な費用にここまでの違いが出るのかについて、ポイントとなる項目ごとに詳しく解説いたします。
駅からの距離が近い、都心部から近いなど、利便性が高いほど費用が高くなります。
・敷地延べ面積
敷地や建物の延面積が大きいほど、不動産の取得や維持にお金がかかります。
また、敷地が借地なのか、それとも自己所有なのかで大きく金額が変わります。
・ 共有スペースの充実度
施設によってはラウンジや豪華な温泉・プールなどの共有スペースを設置しているところがあります。
これらの施設の維持にもお金がかかるので、入居費用も当然高額となります。
・ 居室に導入している設備
居室の面積が広ければ、当然入居費用は高くなります。
また、一般の不動産と同様に、日当たりや眺望が良い部屋の料金は高額となります。
入居費用が高額な施設の場合は、さらに居室内に設置してある家具や設備のグレードが高いことが多いです。
逆に、費用が安価な施設の中には、家具は自分で持ち込む必要があるところもあります。
居室の設備は日常的に利用するものですので、入居前に居室を見学して確認しておくことをおすすめします。
・ 介護スタッフの人員体制
介護付き有料老人ホームを運営するためには、国が定めた「特定施設入居者生活介護」の基準を満たす必要があります。
指定に必要な最低限の人員で運営している施設もあれば、基準よりも職員を手厚く配置している施設もあるため、費用に差が出るのです。
・ 看護師の勤務時間
24時間看護師常駐を謳う施設はありますが、看護師の人件費の分が費用に大きく跳ね返ります。
24時間看護師がいる施設では、何かあった時にいつでも専門家が見てくれるという安心感がある反面、要介護度がそれほど高くない場合、また今のところ大きな持病がない場合は、24時間看護師がいる必要はないかもしれません。
・ 清掃・調理専門スタッフの雇用
介護付き有料老人ホームの中には食事にこだわり、専門の料理人を置いている施設があります。このような施設では、和食・洋食を選ぶことができる場合があります。
高級レストランで供されるレベルの食事が出てくることもあります。また、一般的なホームでは介護スタッフが簡単な清掃業務を兼務していることが多いですが、清掃にもプロを雇用しているところがあります。当然ですが、専門職を雇用するにはお金がかかりますので、その分だけ費用がかかることとなります。
8.介護付き有料老人ホームのかかる費用負担をおさえるコツ
いずれにせよ、介護付き有料老人ホームの入居費用は高額となります。
少しでも費用負担を抑えるコツとして、利用できる公的な制度について解説します。
・ 高額介護サービス費制度
介護保険を利用したサービスを受けている場合は、高額介護サービス費制度が使えることがあります。
介護保険を利用した介護サービスの利用者負担額が1ヶ月の限度額を超えた場合、超えた分が高額介護サービス費として払い戻される制度です。
払い戻しがある場合は市区町村から通知があり申請を行うことで、払い戻されます。
しかし、事前に申請を行う「高額介護サービス費受領委任払い」を申請しておくと、限度額を超えた支払いは発生しません。
限度額を超えるかどうかは施設や担当のケアマネジャーに相談すると良いです。
基本的には限度額を超えないサービス費設定となっていますが、負担割合が2割・3割となっている方は介護サービス費が高額となる為、確認しておきましょう。
対象となる方は、要介護・もしくは要支援の認定を受けている方となります。
残念ながら非該当(自立)と判定された場合は、介護保険サービスを利用できない為対象外となります。
対象となるサービスは、介護保険が適用となるサービスに限られます。
バリアフリー化を含めた住宅改修費用や、ポータブルトイレなどの福祉用具の購入費用、また施設サービスのうち保険適用とならない食費や居住費、日常生活費など、さらに介護保険の支給限度額を超えて全額自己負担となった部分の利用費などは含まれません。
・ 高額医療、高額介護合算制度
高額医療・高額介護合算制度とは、医療費と介護費用の自己負担が極端に重くなることがないように作られた制度です。
1年間(8月1日~翌年7月31日)に支払った医療保険と介護保険の自己負担合計額が限度額を上回った場合に、申請によって限度額を超えた部分の金額が払い戻されます。
同じ世帯で同じ医療保険制度(国民健康保険、後期高齢者医療制度、会社の健康保険など)に加入している方が対象で、合算が可能です。
限度額や世帯の人数や所得によって異なります。
別に住んでいる場合でも適用になります。
9.介護付き有料老人ホームで利用可能な税額控除
介護付き有料老人ホームに親を入居させるために、自分の財産から持ち出すことがあるかもしれません。
このような施設で使える税額控除も覚えておきましょう。
・ 老人扶養制度
70歳以上の高齢者を扶養している人が受けられる控除です。
同居老親(老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と普段同居している人)の場合は58万円、それ以外の者の場合は48万円の控除を受けられます。
・ 障がい者控除
納税者または同じ家計で生活している配偶者や扶養親族に障害がある場合に受けることができる控除です。
障害の程度や同居の有無によって控除額が異なります。
・ 医療費控除
申告する方やその方と生計を一緒にする配偶者その他の親族のために、前年度中に支払った医療費がある場合は、医療費控除を受けることができます。
10.慎重に資金計画を建てよう
介護付き有料老人ホームの費用をまかなう方法として、年金だけで全てをまかなうのが理想的ですが、実際には年金だけでは不足することが大半です。
不動産など手持ちの資産を取り崩す可能性があることから、推定居住年数を考慮して慎重な資金計画を立てましょう。
入居を検討するにあたって、在宅介護でかかる費用と比較することも欠かせません。
以下の記事で、老人ホームと在宅介護でかかる費用や、資金繰りが難しく介護費用が払えない場合の対処法を解説しています。
ぜひ合わせてご参考にしてください。