2021.05.24
【仕組みを解説!】住宅型有料老人ホームの費用
「実家に一人暮らしの親が、食事を作ったり家を維持するのが大変そうだ。でも老人ホームに入るほどではないかなあ?」と感じている方が最近増えています。
ただ、有料老人ホームは費用がかかりそうで心配、というお声もよくお聞きします。
そんな方におすすめなのが、住宅型有料老人ホームという選択肢です。
住宅型有料老人ホームは主に自立した高齢者や基本的には自立しているものの生活の一部に見守りが必要な方を対象とした施設であり、必要に応じて外部の介護サービスを用いて生活します。
この記事では、住宅型有料老人ホームへの入居にかかる費用の仕組みや相場を、初期費用と月額費用に分けてご説明いたします。
さらに、それぞれの費用プランの特徴や費用に差がある理由、費用負担を抑えるコツなど、住宅型有料老人ホームへの入居をスムーズに進めるために押さえておきたいポイントを解説します。
住宅型有料老人ホームの費用のことをすべて解説いたしますので、じっくりお読み頂き、理解を深めて良い施設を選べるようになりましょう。
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1.住宅型有料老人ホームへの入居にかかる費用相場
住宅型有料老人ホームへの入居にかかる費用は、「入居時にかかる費用(入居時費用・初期費用)」と「入居した後に毎月かかる費用(月額費用)」の2つに分けられます。
費用の相場は、費用の支払い方法や施設の充実度・立地など、条件によって大きく異なります。
初期費用がかかる場合の平均額は87.6万円ですが、中央値は7万円(0〜数千万円)となっています。
初期費用がかかる施設とかからない施設の差が非常に大きくなっています。
月額費用の平均額は13.6万円、中央値は12.1万円(12〜60万円)。
いずれの場合も月額10万円以下の費用負担で入居できる施設はほぼないのが現状です。
住宅型有料老人ホームで支払う費用について、以下の段落で順に解説します。
2.住宅型有料老人ホームの初期費用(入居一時金)
住宅型有料老人ホームの初期費用(入居一時金)とは、すなわち前払い家賃のことです。
入居一時金があるタイプの施設の場合、想定される入居期間分の家賃を入居時に一括で支払います。
介護付き有料老人ホームと同様のシステムですが、住宅型有料老人ホームの方が入居一時金が安い傾向にあります。
想定される入居期間とは、その施設にどのくらいの期間居住するかの目安となる期間のことです。
法律で決まった期間があるというわけではなく、施設ごとに平均の入居期間や平均余命などのデータをもとに計算しています。
介護付き有料老人ホームの場合は想定入居期間を5年前後と定めている施設が多いです。
入居一時金と月額費用は、相関関係にあります。
これは介護付き有料老人ホームの初期費用の支払いのパターンと同様です。
➡介護付き有料老人ホームの初期費用
入居一時金の支払い金額と、月額費用は連動関係にあるため、想定される入居期間がどの程度か事前に計算して支払い方式を考えることが重要です。
3.初期費用の償却とは?
介護付き有料老人ホームの費用で最もわかりにくい点が、償却(しょうきゃく)という考え方です。
償却とは、入居一時金から月々の家賃分としてお金を差し引くことを言います。
初期費用の償却とは、入居時点で納めた初期費用(入居一時金)から一定額を差し引くことを指します。
初期償却率は、入居一時金のうちおおむね10~30%程度としている施設が多いです。
初期償却で差し引かれたお金は、1年目の家賃や入居期間が想定よりも長くなった時のための予備費などとして利用されています。
以前は初期償却分を礼金や権利金などとして利用している施設も多かったのですが、現在は老人福祉法の改正により、家賃やサービス利用費以外の用途として利用することは認められていません。
また、初期償却そのものについても認めないとする自治体が増えています。
・ 初期償却の例
初期償却があり、それ以降の償却は年単位で行う施設の例を示します。
入居時に支払った入居一時金500万円、初期償却率30%の施設の場合、入居時点で初期償却分として施設が150万円を差し引きます。
残った入居一時金の額は350万円です。
1年間の家賃相当分(償却分)を50万円と設定されている場合、残りの入居一時金から毎年50万円ずつが差し引かれます。
例えば2年目で退去した場合、350万円-(50万円×2=100万円)=250万円が返還されます。
・ 初期償却がある場合の償却方法
初期償却後の残額を想定入居期間(月数)で割った額が、入居一時金から毎月差し引かれます。
・残額を年ごとに均等償却する
初期償却後の残額を想定入居期間(年数)で割った額が、毎年契約月に入居一時金から差し引かれます。
・ 初期償却がない場合の償却方法
・毎月型
入居一時金を推定入居期間の月数で割った額が、入居一時金から毎月差し引かれます。
・毎年型
入居一時金を推定入居期間の月数で割った額×12が、毎年契約月に入居一時金から差し引かれます。
・ 償却に関するチェックポイント
入居一時金の返還については、退去時に大きなトラブルとなることがあります。
その多くは、償却に関する事柄です。入居を検討するときに、償却については以下の点を中心に確認を行いましょう。
・初期償却がある場合は償却率(施設の取り分がどのくらいか)
・償却期間は何年か
・償却の方法(月数または年数その他)
・償却期間内に退去した時の返還額
・入居一時金の保全措置はあるのか
4.住宅型有料老人ホームのプラン
・ 0円プラン
「0円プラン」とは、入居一時金が0円、つまり全くかからないプランのことです。
入居時にまとまった金額を用意する必要がないため、そもそも財産がない、もしくはすぐに換金できる資産がない場合に利用されます。
突然介護が必要になって入居を検討するというときにも便利です。
その反面、本来は入居一時金として払い込んでいるはずの家賃を毎月少しずつ支払う必要があるため、月額費用は高額となります。
長く入居すると、結局は入居一時金を支払った方が得となる場合もあるため注意が必要です。
・ プランの選び方
どのプランを選ぶと得をするかは、施設で定める推定居住年数と実際に予測される入居年数によって決まります。
入居一時金を支払うと、入居時の負担は重くなりますが、月額費用を安く抑えることができます。
推定入居期間より長く住んだ場合でも追加家賃の支払いなどは不要で、基本的にはご逝去されるまで済み続けることが可能です。
その反面、施設に馴染めない、入居後すぐに亡くなったもしくは大病をして入院したなどの理由で早期退所となった場合、クーリングオフ対象期間(90日)を過ぎた後は、初期償却分は返還されません。
0円プランを利用すると、入居時にまとまった金額を払い込む必要がないので気軽に入居を検討できるのがメリットですが、その反面、月額費用は高額となります。
住む期間に応じて家賃を払い込むことになるため、長く住むと最終的に入居一時金を払うよりも高くつく可能性があります。
プランの組み方にもよりますが、一般的には、推定居住年数よりも長く入居する予定の場合は、入居一時金を高くし月額費用を抑えるように設定した方が得です。
5.住宅型有料老人ホームの月額費用
住宅型有料老人ホームでかかる月々の支払い額には、施設へ支払う月額費用と個人で支払う費用の2種類があります。
・家賃
通常の賃貸住宅と同様、部屋を借りるための料金です。家賃の相場は近所にある賃貸住宅の賃料とほぼ同等の相場となっています。
・電気ガス水道費
光熱費については専有部分で使用した分を個別精算とする施設が多いです。地域や季節によっては、暖房費が追加でかかることがあります。
・共益費
管理費という場合もあります。施設の維持や専有部分以外の共用部分の維持・管理にかかる費用です。施設によってはサービス支援費やレクリエーション費用がこちらに含まれることがあります。
・サービス支援費(日常的な生活支援の費用)
日常的な生活支援を受けるための費用です。例えば来客の取次や宅配便の発送などのフロントサービス、生活相談、緊急時の手配の援助(救急車の手配など)などが行われます。施設によっては共益費(管理費)に含まれます。
・食費
住宅型有料老人ホームは食事を提供することが基本となっており、月々定額を支払う形式がほとんどです。
・介護保険サービスの自己負担分
所得に応じて支払う1〜3割分の負担金です。
・電話代
使った分だけ実費が請求されることがほとんどです。
・理容費
使った分だけ実費が請求されることがほとんどです。
・おむつ代
使った分だけ実費が請求されることがほとんどです。
・医療費
かかった医療費の自己負担分は自分で支払います。
・レクリエーション費
共益費(管理費)に含まれる施設もありますが、大半の施設では、施設が実施するレクリエーションに参加する際の費用は実費となります。
・嗜好品
使った分だけ実費が請求されることがほとんどです。
・保険外サービス費
介護保険の適応とならないサービスを利用した場合は、全額自己負担となります。
・ 介護サービスにかかる費用
住宅型有料老人ホームには介護サービスがついていないので、基本的には外部の事業者と別途契約を行い、居宅介護サービスを受けます。
自分が利用したいサービスを自由に利用することができる反面、利用した分だけ介護保険の自己負担金額を支払う必要があり、最終的な費用がかなり高額になる可能性があります。
また、介護保険で賄われるサービスには限度額があります。限度額は要介護度によって変わるものの、それを超えてサービスを受ける場合は全額自己負担となります。
介護度が高くなればなるほど必要なサービスも増えるので、要介護度が高い場合は「介護型」のサービス付き高齢者住宅もしくは介護付き有料老人ホームの方がお得になることがあります。
6.住宅型有料老人ホームの費用例
住宅型有料老人ホームは施設によって設備や部屋の広さ、そしてサービスに大きな特徴があり、一概にどのくらいの費用がかかるという説明は難しいです。
ここでは設備やサービスともに一般的な施設における費用の一例を示します。
自立している方を想定し、介護サービス費は0で計上しています。
一般的なホームの費用例 | ||
入居一時金 | 670万円 | |
介護サービス費 | 0円 | |
居住費 | 4万9,000円 | |
食費 | 7万1,445円 | |
管理費 | 3万7,000円 | |
その他の費用 | 6万500円 | |
月額費用合計 | 21万7,945円 |
7.住宅型有料老人ホームのメリットとデメリット
他の高齢者向け施設と同じように、住宅型有料老人ホームにもメリットとデメリットがあります。以下で詳しく解説いたします。
・ メリット
住宅型有料老人ホームでは、介護サービスが付属しない分だけ施設の料金が安価に抑えられる場合が多いです。
これは施設によっても異なり、高級志向の施設から最低限のサービスのみを提供し価格を抑えた施設まで、千差万別です。
逆に言うと、それぞれのご家庭のニーズから、最も適した施設を選びやすいのが特徴となっています。
また、基本的には自立した人を対象とした施設のため、他のタイプの高齢者向け施設よりも設備やレクリエーション・各種イベントが充実している施設がたくさんあります。
介護サービスについては必要がない人も多いため、住宅型有料老人ホームの利用料には含まれておりません。
介護サービスを使用したい分だけ外部から購入できるので無駄が少ないこと、また一般的には介護サービス事業者の指定はないことが多いことから、現在自宅で使い慣れている介護サービスをそのまま使い続けることができます。
・ デメリット
住宅型有料老人ホームは、比較的要介護度が軽い方向けに作られています。
入居できる要介護度に規定があり、要介護度が重くなった場合、また認知症がひどくなり身の回りのことがご自分でできなくなった方は退去する決まりとなっている場合があります。
入居する際には退去の基準(要介護度が重くなった場合、そして認知症が進行した場合はどうなるのか、病気で入院した場合の扱いなど)についてしっかりと確認をしておきましょう。
介護度が高い場合、介護保険で利用できるサービスでは賄いきれず、介護保険適応外のサービスが必要になることもよくあります。
要介護度が高い場合、トータルで見ると介護付き有料老人ホームの方が費用負担が少なくなることもあります。
ご家族がどのくらいの介護サービスを必要とするのかをよく検討することが大切です。
8.サービス付き高齢者向け住宅との違い
住宅型有料老人ホームもサービス付き高齢者向け住宅も、施設に居住の契約を結び、外部から介護サービスの提供をうけるという点は共通しています。
住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅との大きな違いは、契約方式と入居者の権利の点です。
住宅型有料老人ホームは利用権形式をとっており、入居した人が亡くなった場合、契約は継続されません。
当然相続もできません。
部屋を借りているわけではなく住む権利を確保しているだけのため、場合によっては施設の都合で部屋を移動させられることがあります。
1日のスケジュールはきちんと決まっており、外出や外泊の際は施設側への届出が必要となります。
その反面、サービス付き高齢者向け住宅はあくまで「賃貸住宅」という扱いのため、契約は通常の賃貸住宅と同じく賃貸借契約です。
入居者が亡くなった場合、住む権利のみ相続が可能です(生活支援サービスを受ける権利は相続されません)。
部屋そのものを借りているため、施設の都合で部屋を移動させられるということはありません。
「住宅」ですので、決まったスケジュールなどはありません。
自由に外出・外泊が可能なことがほとんどです。
そのほか、部屋の広さの基準(サ高住:原則25㎡以上(条件を満たしていれば18㎡)、有料老人ホーム:13㎡以上)や管轄している官庁が異なる((サ高住:厚生労働省・国土交通省、有料老人ホーム:厚生労働省)など、細かい違いがたくさんあります。
9.まとめ
それぞれの費用プランの特徴や費用に差がある理由、費用負担を抑えるコツなど、住宅型有料老人ホームへの入居をスムーズに進めるために押さえておきたいポイントについて詳しく解説しました。
大切な家族のために最も良い形態の施設を選択できるように、各施設のメリットとデメリットを把握し、しっかり情報収集を行っていきましょう。
入居先は、「介護付き有料老人ホーム」か、「サービス付き高齢者向け住宅」になるかなど住宅型有料老人ホーム以外の選択肢も含めて検討することが重要です。
本記事や以下の記事を参考にじっくり検討してみてください。