2021.08.18
認知症になると顔つきが変わる原因とは?顔つきや表情から認知症の理解を深めよう。
index
認知症の方のなかには、顔つきが変わってくる場合があります。
認知症になるとなぜ顔つきに変化が生まれるのでしょうか。
認知症で顔つきが変わる理由、顔つきの変化も含めた認知症の初期症状を簡単に確認できるチェックリスト、AIによる認知症への新たなアプローチについても詳しく解説します。
1.認知症になるとどうして顔つきが変わる?
認知症になると顔つきが変わるのには、いくつかの原因があります。以下、ひとつずつ見ていきましょう。
外部からの刺激が減ってしまうから
認知症の方は年齢を重ねるにつれて、日々の暮らしが単調になりがちです。
子どもや若い頃は、見るもの、聞くものがすべて新鮮だったり、学校や仕事、趣味や方間関係を含めて一日の行動はバリエーション豊かに過ごします。
一方で、認知症が進行し要介護度が高まると、日常生活がルーティン化されてしまいます。
一日の大きなイベントといえば、食事、入浴、排泄が中心でその繰り返しになっていくのです。
日常生活のあらゆる動作がワンパターンになります。
食事は朝・昼・晩の決められた時間に、お風呂も決まった曜日の時間があって、行動とその時間に変化が乏しくなるのです。
その結果、外部からの刺激がなくなって脳の機能がどんどん低下し、やがて顔つきの変化にも現れてしまいます。
脳の自閉化が進行するから
「脳の自閉化」とは、外部からの刺激に対して、何にも反応しなくなる現象です。
健康な方なら、会話をしてもうまくキャッチボールのやりとりができますし、相手からのアクションに反応を示します。
しかし、認知症が進行すると、こちらの問いかけに気づかずぼんやりしたままだったり、名前を呼んでも自分のことだと気づかずスルーしたり、反応の薄い状態が加速します。
こうした自閉化が進むと外部からの刺激に反応しなくなるため、無表情になったり顔つきに変化が起きてしまうのです。
行動心理症状のひとつ、抑うつ状態になるから
抑うつ状態と呼ばれる行動心理症状が原因でも、顔つきは変わります。
行動心理症状とはBPSDともいわれる認知症の二次的な症状です。
認知症による記憶力や理解力、言語機能などの低下や環境の不快などが重なると、もの忘れやコミュニケーション能力の低下が目立つようになります。
その結果、それまで当たり前にできていた日常生活に支障をきたすようになるため、イライラしたり、不安になったり、うつ状態になったりします。
こうした不安感や焦燥感が抑うつ状態を引き起こし、顔つきの変化に影響するといわれています。
2.認知症の方の顔つきの特徴
ここからは、認知症の方が実際にどのような顔つきになっていくのかを学んでいきましょう。
目つきが変わる
目がとろんとして生気が失われたようになるケースが一般的です。
眠気があるときのように、ずっと瞼が下がって小さくなります。
一方で、目つきが険しくなる場合もあるなど、個方差が大きいのが特徴です。
顔がたれる
顔の皮膚がたるんで、全体的におかめ顔のようにたれてしまいます。
もともと面長な輪郭だった方が、ベース型や八角形のように下ぶくれ状態になることが少なくありません。
顔つきに大きくかかわる表情筋が衰えるため、顔全体を支える筋肉が重力で落ちていって、全体的に垂れ下がってしまう場合もあります。
口角に力がなくなる
外界からの刺激に関心がなくなってしゃべったり、笑ったりする機会が減ると、口角がさがってしまいます。
口角を支える口角筋が使われなくなるため、唇をひらく・閉じる、をする動作もしづらくなるためです。
表情が乏しくなる
抑うつや不安状態といった行動心理症状が進行すると、日常生活から生きるエネルギーが失われます。
結果、いきいきとした表情が顔つきから消えてしまいます。
3.顔つきから認知症の方を見分けるAI
近年、医学やIT技術の発展で、認知症かどうかを調べるAIの開発が進んでいます。
よく体調が悪い人を見て「顔色が青い」とか「顔全体が赤くなっている」といったりします。
顔は健康状態を示すバロメーターのひとつになっているのです。
認知症による顔つきの変化も、症状が進行するにつれてある程度パターンがあります。
そこで、認知症患者の写真データをAIに学習させて、認知症の可能性のある方を見分ける技術の研究が注目されています。
もっともよい成績を残したAIの正答率は92.56%。
認知機能が低下している方のサンプルデータをもとに、正答率を高める努力がつづいていています。
将来的に、健康診断のときに顔写真も撮影して、AIが認知症の可能性を判別。
早期発見につなげるのが狙いであり、医学界や介護業界からも期待が集まっています。
参考:認知機能低下患者の顔を見分けることができる AI モデルの開発
4.顔つきが変わった?認知症初期症状のチェックリスト
Q.1 | 同じことを何度も聞いたり、話したりする |
Q.2 | 置き忘れや探し物が増えた |
Q.3 | お金や物を盗まれたとよく話すようになった |
Q.4 | 判断力や推理力の低下 家事や車の運転がうまくできなくなった |
Q.5 | 会話をしても見当違いな内容を話す |
Q.6 | 新しい知識ややり方を覚えられない |
Q.7 | カレンダーの予定を間違えることが増えた |
Q.8 | 外出して帰り道がわからなくなる |
Q.9 | イライラしやすくなった |
Q.10 | こだわりが強くなった |
Q.11 | まわりの人から「様子が変」といわれた |
Q.12 | 不安感、意欲の低下 「さみしい」「怖い」ということが増えた |
Q.13 | 好きだった趣味をやらなくなった |
「親の顔つきが変わった気がするが、いきなり病院は敷居が高い」。
そんなときは、認知症の初期症状のチェックリスを活用してみてください。
5.まとめ
認知症の予防や症状を遅らせるためには、ふだんから新しい刺激を与えることが大切です。
日常生活がワンパターンにならないように、ときには新しい人とコミュニケーションを図ったり、外出や趣味で環境や行動パターンを変えたりするなど、積極的にバリエーションのついた刺激を与えるようにしましょう。
認知症リハビリもあわせて取り入れるようにすれば、脳が活性化するスイッチが入って、認知症の症状の緩和につなげることができます。
人は日々受ける刺激があってこそ、いきいきとした生活を送れます。
QOL(生活の質)を向上させるためにも、親が日常生活でさまざまな刺激を受けられる環境づくりを目指していきましょう。
そのほか、認知症の進行や難しい対応方法のコツなどについても理解を深めたい方は、認知症特集記事ページをご覧ください。