2021.09.10
親が認知症になったらすることの7箇条。必要な手続きから介護保険の利用方法まで解説
「最近、もの忘れがひどくなった」
「時間や場所がわからなくなっている」
親と会話を交える中で、そんなことを感じることはないでしょうか。
心配で医師に相談すると、認知症だったというケースも少なくありません。
今回は、親が認知症になったらすることを7箇条にしてお伝えします。
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親が認知症になったらすること7箇条
加齢ともに患者数が増加する認知症。認知症の親の介護をする要介護者の家族は年々増えています。
もし、親が認知症になったら、どのような対応をすればいいのでしょうか。
まず、その7箇条をご紹介します。
①早期受診・リハビリを行おう
②症状への知識を身に着けよう
③症状への対応方法を知っておこう
④介護保険サービスの利用申請しよう
⑤成年後見制度の手続きをしよう
⑥一人で抱え込まず専門家に悩みを相談しよう
⑦介護以外の時間を大切にしよう
それでは、7箇条を一つずつ詳しく見ていきましょう。
①認知症になったら早期受診・リハビリを行う
7箇条の1番目は、親が認知症になったとき、早期受診や早めのリハビリをスタートすることです。
認知症になったらまずは医療機関への受診を
親が認知症かもしれないと思ったら、できるだけ早く医療機関を受診してください。
認知症の相談先は、次の2箇所がおすすめです。
・かかりつけ医
日頃から身近な病気やケガで受診している病院やクリニックで相談しましょう。
ホームドクターであるかかりつけ医は、患者本人やその家族の状況を理解しているので相談しやすく、適切なアドバイスが受けられます。
かかりつけ医の診察で検査した結果に応じて認知症の専門医を紹介してくれるので安心です。
・医療機関のもの忘れ外来
認知症の代表的な症状のひとつ「もの忘れ」を相談できる病院やクリニックです。
もの忘れ外来では、医師の問診はもちろんのこと認知機能を調べる神経心理検査、脳の状態を診断するCTやMRI、SPECTやPETといった検査を実施します。
こうした診察や検査の結果をまとめて、認知症かどうかや治療方針を総合的に判断します。
認知症になったら行いたいリハビリ
認知症になったら行いたいリハビリ療法にアニマルセラピーや音楽療法といった非薬物療法があります。
・アニマルセラピー
動物とのふれあいを通して、ストレスを和らげたり、気持ちをリラックスしたり、気持ちをいきいき保つのに役立つ方法です。
病院で積極的に取り入れているところもあって、医師や看護師を中心に行うアニマルセラピーをとくに動物介在療法と呼ぶこともあります。
それまで表情が固かったり、気持ちが沈んでいたりした高齢者も、犬と一緒に遊んでいると自然にニコニコして穏やかな表情を取り戻す姿を目にします。
コミュニケーションに乏しかった人でも、自分から積極的に犬をなでたり、話しかけたり。気持ちに張り合いが出て、軽い運動効果もあります。
・音楽療法
音楽や歌を聞く、BGMを流すといったシンプルな方法から、一緒に歌う、楽器を演奏するなど、音楽をツールにしたリハビリテーションのひとつです。
音楽を聞く、演奏することで、ストレスの軽減やメンタルの安定、意欲や運動機能の向上などにつながります。
障害で言葉を使った表現が難しい場合は、音楽を使ったコミュニケーションが意思疎通の手助けになるのもポイントです。
季節の童謡やポピュラー曲を歌う、手拍子やカスタネット、タンバリンや鈴といった誰でも演奏できる楽器を慣らしてみる、リズムをとって体を動かすといった方法を実践してみましょう。
こうした、リハビリは家庭でも気軽に取り入れられる方法です。
ただ、認知症の症状が進行していくと、介護サービスを使いながら本格的な介護ケアが必要になってきます。
認知症リハビリを積極的に行う介護施設の利用、認知症ケアに力を入れている介護付有料老人ホームなどへの入所も選択肢に入れていきましょう。
②認知症になったら症状への知識を身に着けよう
親が認知症かもしれないと気づくためには、症状の特徴を知っておくことが大切です。
ここからは、代表的な認知症の症状と、認知症の原因による症状の違いについてご説明します。
中核症状
中核症状とは、認知症の原因が直接のきっかけで引き起こされる症状です。
主な中核症状には次の4種類があります。
①記憶障害
昨日や今日、先週から数ヶ月前といった、ここ最近の記憶に障害が出る症状です。
認知症の初期では、過去の記憶は思い出せるのに、最近のことを忘れてしまう傾向が強く出ます。
症状が進行すると、過去から現在の記憶全般が失われていって、コミュニケーションや日常生活で家事や身支度にまで影響が出てしまいます。
②見当識障害
見当識とは、「自分は何者か」「いつ」「どこに」いるのか、といった認識のこと。
見当識に障害が出ると、時間の感覚や日付や季節がわからなくなっていきます。
さらに、外出先からの家までの帰り方がわからなくなって生活に支障をきたします。
③失認・失行・失語
感覚が失われていって、周囲の環境がわからなくなったり、さまざまな日常生活の動作ができなくなってしまいます。
言語能力にも影響が出やすく、適切に言葉が使えなくなったり、話がかみ合わなくなったり、コミュニケーション能力が著しく衰えます。
④実行機能障害・判断力障害
手順に沿って物事をこなしていく、筋道を立てて判断する、といった論理的な行動がしづらくなっていきます。
それまでこなせていた家事でも、手順が急に複雑に感じて料理ができなくなる、といったケースが代表的です。
判断力が低下していくと、突発的に後先考えずに何かをやろうとする方もいます。
行動心理症状
行動心理症状とは周辺症状とも呼ばれています。
中核症状が引き金になった二次的な症状です。BPSDと呼ばれることもあります。
周辺症状は、人によって個人差が大きく、症状がさまざまです。
本人が生まれてからこれまでの人生や体験、育ってきたり生活していた環境をはじめ、性格や特性など、さまざまな要素が影響して現れるのが特徴です。
①行動症状
自分の家がわからず徘徊したり、暴言や暴力、生活リズムが乱れるなど、患者によって多様です。食欲が異常に出ることもあります。
②心理症状
妄想やうつ、無気力のほか、物取られ妄想などが代表的です。急に哀しくなって泣いたり、趣味に興味がなくなったりします。
4大認知症とそれぞれの違いとは
認知症には、主に4つの原因が知られています。
4大認知症と呼ばれていて、認知症患者の大半を占める病気です。
それぞれの違いについてご紹介します。
①アルツハイマー型認知症
脳の側頭葉や頭頂葉にダメージが出ます。
中核症状のうち、記憶障害や見当識障害が目立つタイプです。
②脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などによって、前頭葉に損傷を受けて発症します。
実行機能障害のほか、言動が緩慢になります。
③レビー小体型認知症
脳内にタンパク質の一種、レビー小体が増えて、脳細胞にダメージを与えます。
後頭葉に影響が現れやすいため、幻視やパーキンソン病動作が出やすいタイプです。
④前頭型側頭型認知症
感情のコントロールがきかなくなる、軽犯罪など反社会的行為、言語障害といった症状が代表的です。
前頭葉や側頭葉のダメージから発症します。
③認知症になったら症状への対応方法を知っておこう
親が認知症になったとき、周囲の家族はどのように接すればいいのでしょうか。
適切な対応方法を知っておきましょう。
発言を否定せず、話を聞いてあげる
相手のプライドを大切にして、本人の話を受けとめる姿勢が大切です。
たとえば徘徊は、本人が自分の居場所がわからないという不安から起こるといわれています。
頭ごなしに注意するのではなく、本人の不安や心配、安心できる場所を探しているという思いに寄りそう気持ちが大切です。
注意や叱責しすぎると、かえってストレスになって症状が悪化する可能性があります。
行動を受け入れる
認知症の方の中には、食欲が異常に出てしまう場合も少なくありません。
「さっき食事をしたのに、また食べている」と思うと、怒りたくなる気持ちもわかりますが、感情的な対応は禁物。
まだ、食べ足りないのかもしれない、他にもっと食べたいものがあったのかもしれないなど、優しい気持ちで声掛けをしてください。
これまでと伝え方を変えてみる
それまで通じていた表現では、本人が理解できなくなっている場合もあります。
わからない相手がいれば、誰でも角度を変えた表現をしたり、言葉だけではなく身振りや手振り、イラストを描いて伝えようとしませんか。
認知症の方にも、言葉をやさしく言い換えたり、ボディーランゲージを使ったり、コミュニケーション方法にバリエーションを付けながら伝える努力が大切です。
④認知症になったら介護保険サービスの利用申請しよう
認知症の介護には、介護保険制度の利用が欠かせません。
訪問介護や通所介護、施設入所まで、さまざまな介護サービスを利用して本人にふさわしいケアをトータルで行っていくことが大切です。
ここでは、介護保険サービス利用までの流れを、簡単にご紹介します。
- ①要介護度認定審査の申請
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介護保険の介護サービスを利用するには、前もって介護保険制度の要介護度認定を受けておく必要があります。
市区町村の介護保険担当の窓口で相談の上、申請しましょう。地域包括支援センターでも相談を受け付けています。 - ②認定調査・主治医意見書の調整
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申請を受付後、自宅や施設での訪問調査の日程調整の連絡があります。
主治医意見書は市区町村が直接主治医に相談しますが、事前に連絡しておくことをおすすめします。
なお、主治医意見書の作成に自己負担はありません。
訪問調査当日は、調査員は本人や家族への聞き取り調査のほか、生活環境の確認をします。 - ③要介護度の会議判定
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調査内容や主治医意見書は、コンピュータ入力されて、点数化されて要介護度の一次判定を行います。
さらに、一次判定の結果と主治医意見書を総合的に判定する介護認定調査会で正式な要介護度が判定されます。これを二次判定と呼びます。 - ④要介護度の認定
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介護認定調査会の判定に基づいて、最終的な要介護度を市区町村が認定。
認定は7段階、認定されない場合は非該当と判定されます。
・非該当
・要支援:要支援1・要支援2
・要介護:要介護1・要介護2・要介護3・要介護4・要介護5
ちなみに、要支援より要介護、数字が小さいものより大きくなるほど要介護度が高くなります。
たとえば、要介護1の方より要介護5の方のほうが、常時介護が必要な重度の要介護度だということです。 - ⑤介護サービス計画書を作成する
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介護サービスを利用するには、介護サービス計画書(ケアプラン)が必要です。
自分で作成することもできますが、介護支援専門員(ケアマネジャー)に依頼するのが一般的です。
なお、要支援の方は介護予防サービス計画書と書類名が異なりますが、基本的な内容は共通です。
地域包括支援センターで受け付けています。
介護サービス計画書の内容に基づいて、必要な介護サービスを提供している介護事業者と契約を結びます。 - ⑥介護サービスの利用がスタートする
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介護サービス計画書に沿った介護サービスの利用を開始します。介護保険のサービスは多彩です。自宅に訪問して調理や清掃などの生活支援や食事介助や入局介助などを受けられる訪問介護、デイサービスとも呼ばれる通所介護、公的施設や民間企業が運営する老人ホームへの入所など、さまざまなサービスがあります。
⑤認知症になったら成年後見制度の手続きをしよう
最近、高齢者の財産管理や契約事で注目されている、成年後見制度。どのような特徴やメリットがあるのでしょうか。
成年後見制度とは?
成年後見制度には大きく分けて次の2種類があります。
・法定後見
本人の判断能力が不十分になっていて、契約やお金の取り扱いが難しくなっている場合に、家庭裁判所が線にする後見人が財産を管理します。
・任意後見
将来的に判断能力が不安な方が前もって後見人を決めておくものです。将来、判断能力が不十分になったとき、法律関連や財産管理で代わりに対処する人を本人が決めておきます。
法定後見制度の手付きの流れ
ここでは、法定後見制度の手続きを簡単にご紹介します。
- ①申し立て
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家庭裁判所へ法定後見を申し立てる。
- ②家裁による審理
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申し立てを受けて、家裁は書類調査や申立人、本人、後見人候補の調査などを行う。
- ③家裁による審判
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審理での調査結果に基づいて、家裁が成年後見の開始の審判を行い、成年後見人を選定する。
- ④家裁による審判確定
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家裁による審判の内容は、申立人だけでなく本人や成年後見人にも書面で通知される。
- ⑤登記
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法務局に後見の登記を行う。
成年後見制度の注意点
一見、利用すると安心に見える成年後見制度ですが、次のような注意点があります。
<注意点>
- 後見人は毎年または随時、自分の職務内容を家庭裁判所に報告しなければならない
- もし家族以外の後見人(弁護士や司法書士など)が選任されても異議申し立てができない
- 後見人が一度選任されると、家族の意向で交代を求めたり、やめさせたりするのが難しい
- 後見人は、家族や本人の意向をそれほど反映しなくても財産管理ができてしまう
- 申し立てに必要な10万円を超える費用は申立人が負担しなければならない
- 一般的に後見人に報酬を支払うケースが多いためコストがかかる
認知症の高齢者を契約や金銭トラブルから守るために効果的な成年後見制度ですが、メリットやデメリットを比べながら慎重に利用を検討することが大切です。
⑥認知症になったら一人で抱え込まず専門家に悩みを相談しよう
認知症と診断されたり、家族が認知症とわかったら、医療や介護、福祉や家族会などさまざまなサポートを利用しましょう。
1人で悩むより、きっとよりより解決法が見つかるはずです。
主な相談先
・地域包括支援センター
自治体ごとに設置されている地域包括支援センターは、介護相談の窓口です。
認知症をはじめ介護関連のケアの専門家が相談にのってくれます。
・認知症の電話相談
公益社団法人 認知症の人と家族の会では、以下の電話番号や時間にフリーダイヤルで電話相談ができます。
いきなり医療機関や介護の窓口に相談するのは気が引けるという方も、気軽に相談できるでしょう。
電話番号:0120−294−456
※ 075-811-8418(携帯電話から)
受付時間:午前10時〜午後3時(月〜金、祝日を除く)
全国47ヶ所の支部での電話相談も可能です。
ネットワークを構築する
認知症ケアを含む介護で大切なことは、人とのつながりを大切にしていくこと。
次のような方法で、介護を続ける家族のメンタルケアや孤立感を和らげることにつながります。
・SNSやブログを活用する
TwitterやFacebook、ブログなどで介護の日常や悩み、心配事を発信してみましょう。
言葉で自分の気持ちを表現するだけでも、気持ちが楽になります。
また、今自分が置かれている状況を客観的に見つけることができるはずです。
TwitterやブログなどSNSやネットツールによっては、匿名で発信できるのも、気軽に利用しやすいメリットといえます。
・認知症カフェの活用
定期的に認知症高齢者を介護する家族が集まって歓談したり、情報交換をしたりする貴重な場です。
いつ終わるかわからない認知症の家族のケアに、孤立感を深める介護者は少なくありません。
ときどき認知症カフェを訪れたり、オンラインミーティングに参加したりすれば、自分はひとりではないという安心感を得られます。
今日明日で終わるわけではない認知症高齢者の介護。
長い目でケアしていくためにも、こうしたネットワークを構築して気持ちを発散したり、仲間作りをしたりする場をいくつか作っておきましょう。
⑦認知症になったら介護以外の時間を大切にしよう
介護以外の時間をもつことも、介護を続ける家族にとってとても大切です。
親の介護はもちろん大切なことですが、それと同時に自分の人生も大切にしていかなければなりません。
ワーク・ライフ・バランスやキャリア形成とどう取り組むのか、介護疲れで行き詰まらないようにするにはどういった工夫が必要か考えることは非常に大切です。
例えば認知症介護に積極的な老人ホームやグループホームへの入所を考えたり、定期的にデイサービスやショートステイを利用して介護者が一時的に心身を休めるレスパイトケアを取り入れることもひとつでしょう。
長期的な視点に立ちつつ持続可能なやり方で親の認知症介護と向き合うよう心がけること、そして、認知症介護とともに、自身の仕事やプライベート、生きがい作りにどう取り組んでいくか考えることが重要です。
まとめ
現代の医学でも、認知症を完治したり、改善したりすることはできません。
しかし、ここまで見て来たように、認知症は早期発見と早期のリハビリに取り組むことで、症状の進行を遅らせることができます。
そして、本人や家族のQOL(人生の質)を高めながら、充実して日々を送ることができるのです。
最近は、認知症高齢者の急増を受けて、認知症リハビリに熱心に取り組む施設が増えています。
認知症の専門知識や介護スキルに精通した介護スタッフによる認知症ケアを受けられる施設を、ココシニアでもご紹介しております。
もし認知症の家族の介護ケアで悩んでいる人は、ぜひココシニアまでお気軽にご相談ください。