2021.09.14
認知症が進むとどうなる?進行段階ごとの症状と対処方法を紹介します
超高齢社会の日本における認知症患者の増加は著しく、また認知症は、その過程において、症状の進行を避けて通れないものです。
しかし、「認知症が進むとどうなるのか」、「どのような症状が出るのか」、ということをあらかじめ理解し、心の準備をしておくことで、いざとなったときに、適切にサポートをすることができます。
今回は、進行していく認知症の症状と進み方について解説し、対処法やサポートの方法をご紹介します。
index
1.認知症が進むとどうなる? 中期に多い症状と対処法
認知症が進行した中期になると、日常生活に支障が生じ、周りの人の介助が必要となってきます。
<中期症状>
- 同じことを繰り返し尋ねる
- 家族の名前を忘れる
- 話がかみ合わない
- 嘘をつく
- 交通機関の利用方法がわからない
- デイサービスや病院を避けるようになる
- 介護やケアへの拒否感が強くなる
- 感情の昂ぶりが激しくなる
- 汚れた下着や衣服を隠す
- トイレに間に合わなくなる
以下に具体的な症状と対処法をご紹介します。
同じことを繰り返し尋ねる
尋ねられたことを答えるだけでなく、本人にその答えをメモに書いてもらい、一緒に理解をする。
家族の名前を忘れる
自分から名前を名乗り、家族構成を伝える、家族写真などを見せるようにする。
話がかみ合わない
「はい」「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンを心がける。
雑談など結論を求めない会話の場合は、無理にかみ合わせようとしなくても良い。
嘘をつく
嘘でも否定せずに受け入れ、話を聞くことに集中する。
交通機関の利用方法がわからない
一緒に出かけるようにする。
できるだけわかりやすい経路でいくようにする。
デイサービスや病院を避けるようになる
「とりあえず、着替えましょう」と行動を促す。
ご本人の様子を見ながら楽しくなるように声をかける。
どうしても行きたくない場合は、理由を聞き、理解することも必要。
介護やケアへの拒否感が強くなる
介護の必要性を押し付けるのでなく、拒否する理由を聞く。
これから何をしようとするのか丁寧に説明する。
拒否感が強い場合は、専門家へ相談する。
感情の昂ぶりが激しくなる
本人の話す内容を肯定するように心がける。
身体の痛みが原因でイライラしている場合もあるため、興奮が収まってから体調確認をする。
汚れた下着や衣服を隠す
デイサービスなどを活用して、本人が気づかないようにそっと洗い、戻しておく。
トイレに間に合わなくなる
尿意を我慢している可能性があるため、歩き回ったり、落ち着きがなかったり、いつもと違う行動をとっていないか観察する。
2.認知症が進むとどうなる? 後期に多い症状と対処法
認知症が進行した後期では、記憶力が著しく低下し、大切な家族のこともわからなくなってしまいます。
身体が思うように動かなくなり、徐々に寝たきりの状態になります。
<後期症状>
- 目の前にいる人の顔がわからなくなる
- 会話が成立しないようになる
- 尿、便失禁が当たり前になる
- 寝たきりになる
- ぼんやりして反応がなくなる
- 大便を壁や床になすりつける
- 異食をしてしまう
- 飲み込みが困難で、食事ができなくなる
- 生活のすべてにおいて介護が必要になる
- 前傾姿勢や歩行障害など身体能力が低下する
以下に具体的な症状と対処法をご紹介します。
目の前にいる人の顔がわからなくなる
初めて会ったかのように優しく伝える。
知り合いであることがわかるように写真を見せるなど、具体的なエピソードを伝える。
会話が成立しないようになる
無理に会話を成立させようとせずに、会話時の感情を大切にする。
患者さんに寄り添い、いつまでも残る感情を心地の良いものにしてあげる。
尿、便失禁が当たり前になる
尿、便等で汚れる場所をあらかじめ予測しておき、寝ているベッドの周囲に防水シートを敷く、必要な掃除道具を近くに置いておくなど準備をしておく。
寝たきりになる
寝たきりにより、体重により圧迫された場所の血行不良から生じる褥瘡(床ずれ)に気をつけるために、背抜きを行う。
手足を触り、感覚を確かめてあげる。
ぼんやりして反応がなくなる
目の前で大きな動きをする。
スキンシップを増やすなどのアピールを心がける。
気付いたときに微笑んであげるだけでも効果がある。
大便を壁や床になすりつける
患者さんがお尻に感じる不快感を取り除こうとする際に、とりあえず近くにあるもので汚れた手を拭いた場合が考えられる。
「きれいにしましょうね」と優しく声をかけ、叱らずに手の汚れを取り、お風呂に誘導する。
異食をしてしまう
患者さんの目の前に飲み込むことができる大きさの非食物(ゴム手袋、小物類など)を置かない工夫をする。
患者の空腹時に、異食をしないように観察を心がける。
飲み込みが困難で、食事ができなくなる
食べ物の固さを調節する、具材を細かく切ってあげるなど、食べやすさを意識した食事を用意してあげる。
無理して飲み込むと気管に入りかねません。
生活のすべてにおいて介護が必要になる
介護者にかかる負担を最小限にするために、訪問介護、ショートステイ、デイサービスなどの介護サービスを利用する。
認知症家族会への参加や、介護ブログによるコミュニティなどによる心のケアも行うことも必要となる。
前傾姿勢や歩行障害など身体能力が低下する
患者さんをサポートしながら一緒にでかける。
高齢者と歩行速度や歩幅を合わせ、歩行中の転倒に注意をする。
周りに障害物がある場合は排除してあげる。
3.認知症の進み方にはパターンがある
アルツハイマー型認知症の進行経過にはパターンがあり、認知症の一歩手前の状態であるMCIから終末期にかけて、認知機能は低下していきます。
認知機能の低下がみられるなか、認知症の中核症状といわれる、見当識障害や記憶障害の進行に加え、認知症患者の知覚や気分、行動障害などのBPSD(行動・心理症状)があらわれます。図1:アルツハイマー型認知症の進行経過
https://nakamaaru.asahi.com/article/11750426参照
4.認知症の症状の構成要素
認知症では、記憶障害や認知機障害に加えて、幻覚や暴力、徘徊、精神症状などの行動異常が現れる場合があります。
認知症の症状の構成要素である「中核症状」と、「行動心理症状」について、その対処法を詳しく説明します。
中核症状とは?
中核症状とは、脳の認知能力の低下により引き起こされるため、認知症になると誰にでもあらわれる症状になります。
そのため、4大認知症(アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭葉側頭葉変性症)の中でもほとんどの場合に出現します。
中核症状の代表として、本人の自覚がない「記憶障害」と、時間、場所、人などの判断がつかなくなる「見当識障害」があります。
記憶障害は、記憶を司る脳の海馬が破壊され、アルツハイマー患者における海馬の体積が著しく低下することも明らかになっています。
また、見当識障害の多くは、昼夜逆転や道に迷うなどの症状から、ご家族や介護従事者含む、周りの方に迷惑をかけてしまうといったことがみられます。
見当識障害は、ご本人の判断力を低下により、不安や失敗などから自分の身を守ろうとする行動も多く見られます。
これらの中核症状は、認知症になると必ず現れるため、「症状を受け入れること」が大切です。
意識してこちらから会話を繰り返す、メモを残すなどで、記憶を補ってあげる工夫をする、気分転換を図ってあげるといった対処法も効果的。
本人ができることとできないことをこちらが理解し、できる役割を与えてあげることを念頭において、コミュニケーションをとりましょう。
行動心理症状とは?
行動心理症状とは、認知症の進行のなかで、感情、気分、知覚、思考、人格の変化など、患者本人が主観的に経験する、あるいは介護従事者や医師などが観察することができる、「精神神経症状」として定義されています。
行動心理症状は、認知症患者本人と、介護従事者のQOLが低下するだけでなく、介護従事者のストレスが増大するなど、様々な問題が生じてきます。
心理症状として、妄想、幻覚、抑うつ、不安、不眠、行動症状として、徘徊、暴力、介護抵抗などが挙げられ、薬物治療が必要となる場合もあります。
ご本人の元々の性格や、環境によっても左右されるため、このような症状があらわれない方もいらっしゃいます。
行動心理症状への対処法として、音楽療法や芸術療法などが挙げられます。
音楽を媒介として認知症患者の感情にはたらきかける、絵や粘土などの表現手段を利用して、患者の不安の解消や感情の解放を促す、などの非薬物療法が取り入れられています。
また、心理症状の代表例として、「もの盗られ妄想」がありますが、これは認知症の中期にみられ、家族や介護従事者が疑われることが多くあります。
疑われても怒らずに、一緒に探してあげることが大切ですが、妄想が重度の場合には、専門医に相談し薬物療法を取り入れることも可能になります。
また、暴言、暴力への対処法として、「ダメ」と直接的に禁止をする、否定する、介護疲れなどによる苛立ち口調や早口なども、患者さんがストレスに感じてしまう場合があるため、それらを避けることが挙げられます。
さらに、会話も湾曲的な表現で話す巧妙さが必要となります。
徘徊への対処としては、近年、ご近所付き合いが減少傾向にあるため、携帯電話サービスや徘徊探知システムを利用される方が増えています。
5. まとめ
今回は、認知症の進行(中期、後期)に伴う症状と、その対処法をご紹介しました。
認知症は、患者さん本人だけでなく、周りの家族や介護職員によるサポートが重要になってきます。
まずは、家族の物忘れや、行動の変化などにいち早く気付くこと、そして認知症が重度化する前に、治療ならびにリハビリを行うことが大切です。
また最近では、認知症リハビリを専門的に行う介護施設もあります。
気になる方は是非、お問い合わせください。