2021.11.30
親に介護施設へ入居してもらう手順とは?必要な手続きをご紹介します。
多くの人にとって、「親を介護施設に入れること」は初めての経験です。
そのため、どのようにしたらいいかと迷う人も多いのではないでしょうか。
また、「自分の家から離れて介護施設に入れられるのは嫌だ」と感じる親御さんもいらっしゃいますし、「老親を介護施設に入れることに罪悪感を覚える」と思うお子さんもいらっしゃるでしょう。
ここでは、親を介護施設に入れる手順を紹介するとともに、決して無視はできないこの「気持ち」に向き合う方法をお伝えします。
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1.施設入居までの一般的な流れ
今回の記事では、以下のようなケースを主に想定しています。
・認知症が進み、家での生活が難しくなった
・介護度が重くなり、介護負担が増えてきた
・一人暮らしをしている親が介護が必要になったけど、家族と同居はできない
まずは、介護施設入居までの一般的な流れを見ていきましょう。
1.話し合う場所を設ける
まずは本人と家族の間で話し合いをします。
この「話し合い」にどれくらいの時間がかかるかは、ご家庭によって本当に千差万別です。
本人も家族もまったく反対なく合意してすぐに動き始められることもあれば、説得が長引くこともあります(後述します)。
必要に応じて専門家の助けも借りましょう。
2.条件の洗い出し~資料請求
上でも述べたように、ご高齢の方を対象とした施設の種類は非常に多いといえます。
たとえば、特別養護老人ホームや介護医療委員、住宅型有料老人ホームなどです。
・終身利用が可能かどうか
・入ることのできる介護度はどこまでか、介護度が高くなった場合はどうするか
・公的機関か民間機関か
などを考えて探します。
この段階で、本人・家族の求める条件を洗い出しておきます。
3.施設の絞り込み
上記の「施設探し」で求める条件をクリアした施設のなかから、費用や居住空間、入居待機時間はどれくらいなのかを確かめるようにしてください。
4.施設見学・体験入居
家やお墓を選ぶときも同じことがいえますが、カタログスペックだけではその介護施設の実態はつかみきれません。
そのため、必ず施設見学を行い、可能ならば体験入居も行うようにしてください。
5.契約~入所
「ここで問題がない」「ここが良い」となったら、契約~入所に至ります。
なお体験入所の前~この前段階で、「必要な資料をそろえること」「面談」」「入居前の審査」が行われます。
問題がなければ契約して入所となります。
2.介護施設に入所する5つのタイミング
介護施設に入所するタイミングは、ご家庭によって異なります。
ここからは、介護施設への入所理由を調査したデータと、代表的な入所タイミングについて解説していきます。
家庭内での介護が困難になった
「今までは家でみていたが、介護度が進んで家でみることが難しくなった」などのような状況で、介護施設への入所にいたったというケースは非常に多いといえます。
実に3分の2近い人が、これを理由に挙げています。
介護をしている人の気力や体力が限界だった
介護と子育ては、「1人では自立した生活が難しい人を助ける」という点では一緒です。
しかし子育ての場合、基本的に子どもは成長し、自立する力を身につけます。
対して介護の場合は、自立していた人が介護を必要とするようになるわけですから、「元気なころを知っている家族」にとっては心理的な負担が非常に大きいものです。
また、子どもとは異なり体も大きいため、体力も使います。
さらに、介護には明確な終わりの指標がありません。
このようなことから、家でみることができなくなり「介護施設入所」という選択肢が選ばれることもあります。
介護者がいない
老老介護が問題になっていると指摘されて久しい今、「介護する人がいないこと」も非常に大きな問題となっています。
主な介護を担っている人の割合は60歳以上が圧倒的に多く、全体の70パーセントであるという統計結果もあります。
そのため、「主に介護を担っていた人が倒れ、その人も要介護状態になってしまったため面倒をみる人がいなくなった」なども、介護施設への入所を決める大きな要因となっています。
プロに任せたい
「介護や看護をプロの手に任せたい」ということから、介護施設入所を決めた人もいます。
介護や看護は技術を必要とするものであるため、プロに頼りたいという人も多くみられます。
プロの手による介護や看護は安心感もありますし、分からないことなどを聞けるという心強さもあります。
住宅事情によるもの
「廊下が狭くて車椅子が通れない」「エレベーターのない3階に住んでいる」「借家なのでバリアフリーにリフォームすることができない」などの理由もまた、入所を検討する材料となります。
ここでは代表的なものを取り上げましたが、ほかにも「本人が希望した」「リハビリが必要になった」などの理由で入所を決める場合もあります。
いずれの場合でも、ご本人とご家族の間で合意がとれてから入所に至れるようにするのがベストです。
出典
久喜市「第4章 高齢者生活実態調査<施設入所者>の結果」
内閣府「平成30年版高齢社会白書 第1章 高齢化の状況(第2節 2)
3.施設に入りたくない親の気持ち
介護施設に入ることが第一の選択肢となる場合であっても、やはり「介護施設には入りたくない」と考える人もいます。
このような場合は話し合いの場を設け、可能な限り本人と家族が納得できるかたちにまで持っていくことが求められます。
そのためには、まずは「介護施設入所を嫌がる親の気持ちを理解すること」が重要です。
以下では親の気持ちや思いを解説していきます。
住み慣れたところから離れる寂しさ
「住み慣れたところから離れる寂しさ」は、介護施設入所を拒む理由のなかでももっとも多きものだといえます。
これは単純に、「どこに何があるかをすべて把握している住み良い自宅から、ほかのところに移るので不便である」というだけの理由にはとどまりません。
たとえば、「思い出が染みついた家から離れられない」「自分自身の築き上げた家から離れなければならないほどに、自分が衰えたことを認めたくない」「近所に住む友人などと離れたくない」「自由を失いそうで嫌だ」などのように、精神的な面が深く関わってくるものでもあります。
引っ越しは、多くの人にとってストレスとなるものです。年を重ねた後での引っ越しは、特にその傾向が顕著でしょう。
「家族に見捨てられる」という恐怖感
現在の介護施設は、ご入居者の尊厳や自由を大切にしているところが非常に多いといえます。
ただそれでも、「家族と離れ離れになる」ということで、家族から見捨てられるのではないかという恐怖感を抱く人も多くいます。
「もう二度と会いに来てくれないのではないか」「姥捨て山のようにして利用されるのではないか」と考え、これを理由として介護施設への入所を拒むケースもあります。
経済的な不安
介護施設への入所には、当然お金がかかります。
その介護施設の種類や設備によっても金額は異なりますが、おおむね、50000円~30万円/月 が多いかと思われます。
また入居一時金として、数百万円を支払わなければならないケースもあります(※入居一時金がまったくかからない施設もあります)。
そのため、「経済的な不安がある」「家族にお金を使わせるのが心苦しい」として、介護施設への入所をためらう人もいます。
4.スムーズに入居してもらうためのコツ
一口に「介護施設への入所を嫌がる人」と言っても、その理由はさまざまです。
ここで重要なのは、「自分の親が介護施設入所を嫌がる理由」を丁寧に聞き出しつつ、その不安や恐怖を解消してあげることです。
納得して介護施設に入居してもらうためのコツを紹介します。
「大切だからこそ、面倒をみてもらえるところに」「見捨てるわけではない」と説得する
「見捨てられることが怖い」「家から離れたくない」という人には、「見捨てるわけではない、毎月●回は必ず会いに行く」「お父さんのことが大切だからこそ、プロの手によるしっかりとした介護を受けてほしい」などのように説得するとよいでしょう。
またこのときに交わした約束は守るようにしましょう。
折に触れて会いに行ったり、電話をしたりと、子供との接触回数が増えることで、高齢者の幸福感が高まることがわかっています。
高齢者の幸福感について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
➡親のことを想うなら、ココシニア一択。その理由は、ココシニア独自の「幸せサポートシステム」。
経済的な不安を抱く必要はないことを伝える
経済的な不安が理由で介護施設入所を渋っているのであれば、その点に関しては問題のない旨を伝えましょう。
介護保険が使えることなどを伝えるのも伝えて、安心させるのも良いでしょう。
子どもの窮状を訴える
基本的には、「大切だからこそ、きちんとしたところで面倒をみてもらいたい」「見捨てるわけではない」「経済的な不安も持たなくて良い」と伝える方向で行くべきですが、それでも親がどうしても受け入れない……という場合は、子どもの窮状を訴えることも考えてください。
「介護で眠れなくて体調を崩している」などと伝えるのです。
これは、親が大切であればあるほど言いにくいことかもしれません。
しかし次の項目でまとめるように、無理をすれば共倒れになってしまいます。必要に応じて、自分たちの悩みを伝え、状況を理解してもらうことも重要になってきます。
5.「施設に入れたこと」を悩まないために
親を介護施設に入所させた(あるいは入所させようとした)人のなかには、「自分を生んでくれた人なのに、施設に丸投げしてしまった」「自分は親を見捨てた親不孝者だ」という罪悪感をずっと抱えてしまうケースもあります。
しかし、このような罪悪感にとらわれる必要はありません。
介護は非常に過酷なものです。上でも述べたように明確な終わりがあるものではありませんし、自分を守ってくれた親の面倒を自分がみなければならないという切なさもあるものです。
体力的にも厳しく、時間的な負担や金銭的な負担も大きいものです。
このようななかで、無理に在宅介護を続けようとすると、親と子どもが不仲になってしまうことすらあります。
どれだけ愛しい家族であっても介護によって家族自体が崩壊し、時に殺人事件などにまで至ってしまうことすらあります。
介護施設は、「姥捨て山」ではありません。
介護や看護に尽力するプロがいて、そのプロがずっとサポートしてくれる場所です。
適度な距離を取り、お互いの心と体を守るための選択肢として、「介護施設への入所」があるのです。
「自分のせいで、子どもが苦労を抱えること」を望む親は決して多くはないでしょう。また、「自分の介護施設入所を理由として、子どもが罪悪感を抱くこと」を望む親も多くはないはずです。
お互いのことを尊重し合い、思い合い、いたわり合うためには、お互いに「余裕」が必要です。
介護施設への入所は、そのような「余裕」を持つための選択肢のひとつなのです。
6.まとめ
生活そのものが変わってしまう「介護施設への入所」を嫌がる人に対しては、きちんとした話し合いの場所を設ける必要があります。
なぜ嫌なのかを聞き出し、その不安を解消するための語り掛けを行っていくことが重要です。
またそのためには、「介護施設入所までの流れ」「ほかの人が介護施設入所を決めた理由」を知ることが必要だといえます。
以下の記事では介護施設の選び方のポイントについて、専門家が詳細に解説をしております。
ぜひこちらも合わせてご参考にしてください。