2021.11.02
レスパイト入院とショートステイの違いとは?レスパイト入院の使い方・具体例から利用ルールまで解説!
「親を介護しているけれど、遠方の親戚の冠婚葬祭に行かなければいけなくなった」
「毎日介護をしていて疲れたから、休める時間がほしい」
このようなときは、レスパイト入院やショートステイの活用を視野に入れてみましょう。
ただ、レスパイト入院とショートステイの違いがわからないというかたもいますよね。
どちらも介護者の休憩のための制度ですが、何が違うのでしょうか。
当記事では、レスパイト入院とショートステイの違いを解説していきます。
さらに、レスパイト入院について詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてください。
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1.レスパイト入院とショートステイの違い
レスパイト入院と似た役割を持つ「ショートステイ」。
どちらも、介護者の休息のための制度という点では共通しています。
そのため、レスパイト入院とショートステイは何が違うのか、疑問に思うかたもいるでしょう。
まずは、レスパイト入院とショートステイの違いを解説していきます。
・対象者
・医療対応の可否
・保険の種類
・連続利用日数
これらの観点から、ふたつの違いを見ていきましょう。
対象者
ショートステイは、基本的には介護認定を受けているかたが対象です。
利用者の心身の状態が優れない場合や、介護者に用事ができた場合、介護者の身体的・精神的負担の軽減が必要な場合などに使用できます。
対して、レスパイト入院の対象者は、在宅療養をしており、ショートステイの利用が困難なかたです。
医療的なケア・管理を常時必要としている場合に対象となります。
例えば、人工呼吸器を装着しているかたや、胃ろうのかたなどがレスパイト入院の対象です。
それらの医療管理・ケアが必要なかたは、施設によってはショートステイの受け入れができません。
そういった場合に、レスパイト入院が活用できます。
医療対応が可能か
ショートステイの場合は、医療管理・ケアをしているかたを受け入れられない場合があります。
医療対応ができるかどうかは施設によって異なるのです。
対して、レスパイト入院は病院で行なうため、医療対応が可能となっています。
介護保険か医療保険か
レスパイト入院もショートステイも共に費用負担の何割かが保険から支払われますが、どの保険を使用するかが以下のように異なります。
レスパイト入院:医療保険
ショートステイ:介護保険
なお、レスパイト入院は介護認定を受けているかたでも利用できます。
連続利用日数
連続利用日数も異なります。
ショートステイの場合、連続利用日数は最長30日間です。
連続しない場合は30日を超えても良いですが、合計日数は介護認定期間の半数までとなっています。
例えば、介護認定期間が180日の場合、90日までショートステイが利用可能です。
対して、レスパイト入院の連続利用日数は原則14日以内です。
連続しない場合、合計日数60日まで利用できます。
ただし、60日に達すると、それから3ヶ月はレスパイト入院が利用できなくなります。
2.そもそもレスパイト入院とは
ここまでレスパイト入院とショートステイの違いを解説してきましたが、そもそもレスパイト入院とは何なのかがわからないかたもいるでしょう。
レスパイト入院は、ショートステイと同じように、介護者の休息のための制度です。
「冠婚葬祭のために、面倒を見ることができない」
「ずっと介護をしていて疲れたから、休みたい」
といったときに利用できます。
ここからは、そんなレスパイト入院について詳しく解説していきます。
利用対象者
レスパイト入院は、在宅療養を行なっており、以下のような医療管理・ケアが必要なためにショートステイが困難なかたが対象となります。
<レスパイト入院の対象者>
- 点滴・胃ろう・経鼻による栄養を必要としているかた
- 気管切開をしているかた
- がんの疼痛管理をしているかた
- 褥瘡の処置が必要なかた
- 在宅酸素をしているかた
また、原則として退院後に自宅に戻れるかたが対象です。
受けられるサービス
レスパイト入院では、以下のようなサービスを受けられます。
・食事・排泄・更衣・入浴などの介護
・必要な医療管理・ケア
・必要であればリハビリ
患者の状態に合わせたケアを行なってくれます。
オムツなどのアメニティを使用する場合は別料金がかかるので、事前に確認しておきましょう。
入院までの流れ
レスパイト入院の基本的な流れは、以下のとおりです。
- 相談
-
かかりつけ医・訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所・地域包括支援センターのいずれかに、レスパイト入院をしたいことを相談します。
- 申し込み
-
相談を受けたかかりつけ医・訪問看護ステーション・ケアマネジャーが、病院に申し込みをします。
- 面談
-
病院によっては、初回申し込み時に面談が必要になることがあります。
- 病院からの回答
-
申し込みを受けた病院が、レスパイト入院の受け入れが可能かどうかの回答を、申込者に送ります。入院患者やその家族は、申込者を通して回答を受け取ります。
- 入院
-
入院日時が決まったら、入院をします。
このような流れで入院まで進み、入院期間を終えると、退院します。
レスパイト入院を利用したい際は、病院に直接申し込んでも対応してもらえないことがあるので注意が必要です。
上記の通り、かかりつけ医・訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所・地域包括支援センターのなかから、普段お世話になっている担当者にまず相談してみると良いでしょう。
3.レスパイト入院のルール・期間について
レスパイト入院を利用する際に知っておきたいのが、ルールや期間です。
レスパイト入院を上手に活用するためにも、ルールや期間を知っておきましょう。
基本ルール
レスパイト入院は、介護者の休憩のために作られたものです。
「冠婚葬祭の予定が入ったから」といった場合はもちろん、「ずっと介護をしていて疲れたから、休憩したい」といった特別な理由がない場合にも利用できます。
「自分が介護しなくちゃ」
「誰かに任せるなんて悪いような気がする」
と思い悩まずに、気軽に相談してみましょう。
ただ、レスパイト入院には定められたルール内で利用する必要があります。
レスパイト入院の基本的なルールは、以下のようになっています。
<基本ルール>
- 入院・退院は平日に行なう
- 入院前に、健康状態把握のための検査を行なう
- 入院時に、お薬手帳と服用中の薬を持参する
- 入院期間後は、自宅に戻る
- 病棟の空き状況によっては、入院期間や部屋が希望通りにならない場合もある
- 入院期間中は、他の医療機関に受診できない
- 他の患者への迷惑行為があった場合は、入院の継続ができなくなることがある
ただし、詳細なルールは病院によって異なります。
レスパイト入院をする病院のルールを確認しましょう。
入院できる期間
レスパイト入院の一回の入院期間は、基本的には14日間です。
病院によっては、7日間の場合もあります。
また、レスパイト入院は何度も利用できます。
ただし、入院の合計日数は60日間までです。
60日に達した場合は、3ヶ月のレスパイト入院を利用できない期間が設けられます。
具体的には以下のようなルールが適応されます。
ここで例を出してみます。
合計日数は56日間。
5回目のレスパイト入院は4日間まで。
5回目で60日に達してしまったので、6回目以降は3ヶ月後にできるようになります。
レスパイト入院には入院期間のルールがありますので、計画的に利用しましょう。
4.レスパイト入院の使い方
ここまでレスパイト入院について解説してきましたが、実際のところ、どのような場面で利用するのか想像できないかたもいるのではないでしょうか。
レスパイト入院は、利用した介護者の多くが「家族の身体的・精神的負担が軽減した」と感じている制度です。
積極的に活用していきたいですよね。
以下では、レスパイト入院の使い方や具体例を紹介します。
レスパイト入院の利用を検討しているかたは、利用シーンをイメージしてみてください。
具体例①
床ずれの症状を持つ母を在宅で介護している場合、なかなか長期的に外出することはできません。
床ずれは定期的にケアを行なわないと、症状が悪化する可能性があるためです。
しかし、ショートステイの場合、床ずれのケアといった医療管理に対応できないことがあります。
そんなときに役立つのがレスパイト入院です。
例えば、冠婚葬祭の予定が入って、遠方の地に外出しなければいけなくなった場合は、レスパイト入院を活用すると良いでしょう。
床ずれのケア・管理もしてもらえるので、安心して外出できます。
具体例②
どんなに大切な家族であっても、毎日昼夜問わず介護をしていると疲れてしまうものです。
介護しているかたが楽しい毎日を過ごすためにも、一息つける時間を定期的に確保することをおすすめします。
その際の選択肢として出てくるのがショートステイですが、ショートステイは医療管理・ケアに対応していないことがあります。
しかし、医療管理・ケアを必要としているかたを介護しているからこそ、気が張ったり、疲弊してしまったりしますよね。
どんなかたを介護していても、休憩は必要になります。そんなときに利用できるのがレスパイト入院です。
例えば、毎日、胃ろうで栄養を取っている義父を介護していて疲れてしまった。
そんなときはレスパイト入院の活用を検討してみてください。
特別な理由がなくても、介護者が休むためにレスパイト入院を使うことができるのです。
ショートステイを利用できないかたを受け入れられるのが、レスパイト入院。
介護疲れを起こさないように、介護をしているかたもしっかりと休みましょう。
5.まとめ
「介護者のための制度」として、同じような役割を持つレスパイト入院とショートステイ。
医療対応ができるかどうかに着目して、適切な滞在先を選びましょう。
近年では、有料老人ホームなどの介護・医療体制が整った施設でもショートステイサービスを利用できるようになっています。
レスパイト入院やショートステイを利用するための施設が見つからないというときも、諦めずに探してみてくださいね。
また、近年は「ロングショートステイ」というサービスも注目をされています。
ショートステイは短期利用が基本となりますが、介護者の事情によっては、長期的にショートステイを利用することができます。
ロングショートステイについては、以下の記事で詳しく解説しております。
ぜひこちらもご参考にしてください。