2021.10.20
叫び続けてしまう認知症の方への対応方法とは?原因を知ってお互いの負担を軽減しよう。
認知症の方の介護で最も困ることの一つに、暴言や暴力があります。
日夜問わず叫び続けている方の面倒を見ることは介護者にとっても大きなストレスとなり、在宅介護を断念せざるを得ないケースもたくさんあります。
今回は、認知症で叫び続けてしまう方を介護している方に向けて、どうして叫び続けているのか、叫び続ける理由を認知症の中核症状・行動心理症状の観点から解説します。
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1.認知症の方がなぜ叫び続けてしまうのか
認知症の方が叫び続ける理由はいろいろあります。
そこで、目の前の方がどうして叫び続けているのかを知ることが、叫び続けることへの有効な対策につながります。
ここではどうして叫び続けるのか、主な理由について中核症状と行動心理症状の観点から簡単に説明します。
自分の意思が相手にうまく伝わっていないから
認知症の中核症状の一つに言語障害があります。
言葉の理解や言いたいことを表現する能力が低下するため、自分の思っていることを相手に正しく伝えることが難しくなります。
相手に伝わらないことでイライラして大声を出すことは、気の短い普通の人でも時折見られることです。
混乱していて不安なことがあるから
認知症の中核症状の一つに、理解・判断力の障害があります。
物事を理解する力とともに情報を処理する力も低下するため、いつもと違うことが起こると理解できずに混乱するのです。
体調不良があるから
認知症の中核症状の一つである言語障害によって、自分の身体の不調を正しく伝えることができず、辛さを我慢できずに叫び続けることがあります。
周囲の環境が不快であるから
認知症の中核症状の一つである言語障害によって、周囲の環境が不快であることを正しく伝えることができないことも、叫び続ける原因となります。
また、同じく中核症状の一つである見当識障害によって、自分の今いる環境が理解できずに、家にいるのに「家に帰る」などと叫び続けることもあります。
幻覚・妄想が起こるから
認知症の行動心理症状の一つに、幻覚・妄想があります。
誰もいないのに、誰かがいると主張してみたり、本人にしか見えていない人や物に対して話しかけたりすることがあります。
2.認知症の方が叫び続けているときへの対応ステップ
叫び続けている認知症の方のお世話をするときの対応には、いくつかのコツがあります。
叫ぶには、何か理由があることがほとんどです。
介護している人が悪いわけではありません。
対応を誤るとより一層ひどく叫び出し、場合によっては暴力などにつながることもあります。
叫び続けている認知症の方への望ましい対応について、段階を分けて説明いたします。
①物理的に距離をおいてみる
対応の1つ目のステップは、物理的に距離を置いてみることです。
大声で叫び続けている方は興奮状態にあります。
また介護者の側も、叫び続ける相手を前にして、冷静さを欠いていることが多いです。
このままの状況が続くと大声が暴言・暴力につながり、介護している側・される側双方に不幸なこととなります。
他に対応できる人がいる場合は、対応する人を変えてみましょう。
②感情的な距離をおいてみる
対応の2つ目のステップは、感情的な距離を置いてみることです。
対応できる人間が他にいない場合は、冷静に対応するように自らに言い聞かせましょう。
介護する側が強い口調や大きな声で話すと、介護されている側は不安と恐怖、そして怒りを感じ、より一層大声で叫び続けます。
③誰かに相談をする
対応の3つ目のステップは、誰かに相談をしてみることです。
一緒に介護をしている家族や気の置けない友人でも良いですし、担当医やケアマネージャーなど専門家へ話をしてみるのもおすすめです。
また、認知症や介護に関する家族の会もありますので、そのような場所だと同じ経験をした方と出会うことができるかもしれません。
話し相手がいない場合は、日記やメモにつけておくだけでも感情を発散する良い手立てとなります。
特に在宅介護をしている場合は、周りに相談できる人がおらずストレスを溜め込むことによって、知らず知らずのうちに介護している人にきつく当たってしまうことがあります。
介護されている側は不安や恐怖を感じやすい環境になるので、余計に状況が悪化します。
ほかのご家庭では、どのように介護を行っているのか情報を収集したり、介護に対する不安が綴られる「介護ブログ」を除いてみるのもの効果的でしょう。
おすすめの介護ブログについては、以下の記事でご紹介しております。
➡介護ブログおすすめランキング~家族介護から介護職員、認知症当事者まで~
対応時の注意点
叫び続けている方の対応をする時に気をつけたいのは、介護する側が感情的にならないこと、また介護される方も同じ人間だということを忘れないことです。
介護者も人間ですので、こちらの言うことを全く聞いてくれずに叫び続ける方の対応をずっと行っていたら、ストレスが溜まって感情的になります。
その感情をストレートにぶつけることによって、叫び続ける状況はより悪化します。
レスパイトやショートステイをうまく利用して介護から離れる時間を作ることで、介護する側のストレスを解消することも効果的です。
また「認知症だからできない、説明してもわからない」という介護者の誤った思い込みによって、叫び続ける状態がより長く、よりひどくなることがよくあります。
介護される側の自尊心を尊重することで、叫ぶことが少なくなる可能性があります。
最も対応に困るのが、夜間に大声を出したり、昼夜逆転しているケースです。
夜間に叫び続けている場合は、自分が今いる場所や時間がわからなくなる見当識障害を起こしている可能性があります。
真っ暗な中、一人でいることに不安や恐怖を感じていることもあります。
安心してもらうために、部屋を真っ暗にしない、小さめの音で良いのでラジオやテレビをつけておくなど、人の気配を感じるようにすると落ち着くことがあります。
昼夜逆転を改善することも大切です。
日中はできるだけ眠らないように、生活にメリハリをつけることをおすすめします。
戸外へ散歩やお出かけをしてみるのも良いでしょう。日光を浴びることも大切です。
朝になったらカーテンを開けて、陽の光を寝室へ取り入れましょう。
夕方以降は逆に、ゆっくり睡眠が取れるように興奮しやすい予定を入れるのはやめましょう。
3.認知症の方が叫び続けてしまう状況への予防策
最後に、認知症の方が叫び続けてしまう状況への予防策を、叫ぶ原因別にいくつかお伝えします。
自分の意思が相手にうまく伝わっていない場合
まずは相手の話をしっかり聞いてみましょう。
落ち着いて「どうしたの?」と問いかけることで、相手の言いたいことが掴めてくることがあります。
認知症の方相手に問いかけるのはこちらも忍耐が要求されますが、諦めず辛抱強く、そして穏やかに問いかけてみましょう。
混乱していて不安なことがある場合
あらかじめ、相手が混乱しそうな要素を取り除いておくのも良い対応方法の一つです。
どこかに行く時は事前に手順を説明しメモを作成しておく、夜中暗いのを嫌がる方には電気をつけておく、トイレや自分の部屋に目印をつけておくなど、その方に応じた対応を考えましょう。
体調不良がある場合
意味もなく叫んでいるように見える場合は、どこか身体の調子が悪いのかもしれません。
「頭痛くない?」などと具体的に、そして根気よく問いかけることで、不調の原因を探しましょう。
また、顔色や口調をよく観察し、いつもと変わりがないかどうか比べてみてください。
病院に連れて行くときも、不調を解消するために行くことを、落ち着いた口調で繰り返しお話しすると良いでしょう。
周囲の環境が不快である場合
体調が悪い場合と同じように、例えば部屋が暑い、照明が眩しいなど、周囲の環境が不快であることをうまく表現できずに叫び声が出てしまうことがあります。
穏やかな口調で、具体的に「部屋は暑くないか?」などと質問してみると良いでしょう。
室内温度が下がりやすい冬場には、ヒートショック現象に注意することも重要です。
ヒートショックについては、以下の記事で詳しく解説しております。
➡ヒートショックが起きたら…症状に応じて正しく対応しよう。
幻覚・妄想が起きている場合
幻覚・妄想が起きている場合は、頭ごなしに否定せずに相手の話を傾聴しましょう。
その上で、見えない人が見える、聞こえないはずの声が聞こえるなどといった幻覚・妄想が悪さをすることはないことを伝えます。
4.叫び続けてしまう認知症の症状に折り合いをつけることも重要
以上、認知症で叫び続けてしまう方の介護にお困りの方に向けて、どうして叫び続けているのか、また叫び続けている時の対処法および予防法を簡単にまとめました。
認知症の方の相手をすることは我慢と忍耐の必要なことであり、介護する側にも大きなストレスと負担がかかります。
介護者側のケアをするためには、介護者自身が休息を入れる必要があります。
介護者が定期的に介護休暇をとることで、落ち着いて介護ができるようになり、結果としてフレッシュな状態で介護が再開できるという好循環が生まれます。
レスパイトケアやショートステイなどを上手に利用して、ストレス解消を図りましょう。
ココマガジンでは、そのほか認知症症状への対応方法を解説した記事を多数掲載しております。
ぜひこちらもご覧ください。
そのほか、認知症の進行や難しい対応方法のコツなどについても理解を深めたい方は、認知症特集記事ページをご覧ください。