2021.11.24
レビー小体型認知症の寿命は短い?平均余命、予後、進行経過について解説します。
皆さんは、「レビー小体型認知症」をご存知ですか?
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症とともに「三大認知症」といわれており、認知症のなかでも、特に症状の進行が早いという特徴をもっています。
今回は、レビー小体型認知症患者への対応方法に悩んでいらっしゃる方や、在宅介護を考えていらっしゃる方のために、レビー小体型認知症の症状や進行状況、寿命や経過、さらには適切な対応方法などをご紹介します。
index
1.レビー小体型認知症とは?
「レビー小体型認知症」という用語は、1996年に開催された国際会議にて、レビー小体を伴う認知症(Dementia with Lewy Bodies :DLB)として定義されました。
脳の一部に、レビー小体(LB)と呼ばれる異常なタンパク質が形成されることを特徴とする神経変性疾患の一つです。
他の認知症との違い
レビー小体型認知症の臨床診断は、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病との間に、症状の多様性や重複があるため、診断が難しい場合があります。
特に、アルツハイマー型認知症と、レビー小体型認知症は、「進行性の認知機能の低下」を示すという点で、非常によく似ているといわれています。
しかし、レビー小体型認知症患者は、アルツハイマー型認知症患者に比べて、以下のような違いがあります。
<アルツハイマー型認知症との違い>
- 認知機能の低下に変動性があること(時間や日によって変わる)
- 視覚知覚、注意力における障害が顕著である
また、レビー小体型認知症患者では、言いたい言葉が見つからない(視空間的処理能力)、会話についていけないなどの症状が顕著に現れます。
通常型と純粋型の違い
レビー小体型認知症には、アルツハイマー型認知症の病変を伴う「通常型」と、アルツハイマー型認知症の病変を伴わない「純粋型」に分けられます。
通常型
純粋型
パーキンソン病との違い
最近の研究では、レビー小体型認知症とパーキンソン病が、脳に「レビー小体」を持つ同様の疾患であることが報告されています。
また、パーキンソン病患者の大部分は、レビー小体型認知症の中核的な特徴を示し、パーキンソン病患者とレビー小体型認知症患者との間にはほとんど病理学的な違いがないとされています。
しかし、レビー小体型認知症は、パーキンソン病に比べて、手足の震えや、筋肉のこわばりなどの運動障害が少ないのが特徴的です。
この違いは、レビー小体が脳のどこに形成されるのかの違いによるものであることがわかっています。
レビー小体型認知症では、脳の中で、思考や感覚、言語を司る脳の外側の層(大脳皮質)にレビー小体が形成されます。
一方で、パーキンソン病では、体の動きを調節する部位である、脳の中心部分(黒質)にレビー小体が形成されます。
脳におけるレビー小体の形成場所により、症状の違いが生じるのです。
2.代表的な症状
中心となる症状要
レビー小体型認知症の中心となる中核症状は3つあり、数分から数週間にわたって起こる「認知機能の低下」、徐動と硬直を繰り返す「特発性パーキンソニズム」、家族や動物の姿を想像するなどの「幻覚症状」が挙げられます。
認知機能の低下
レビー小体型認知症患者では、認知機能の低下のなかでも、特に「注意機能」における障害が確認されています。
また、認知機能障害は変動しやすく、調子が良いときと、悪いときを繰り返しながら症状が進行します。
短い時間感覚で、周期的に注意力や覚醒度が低下し、日中の眠気や会話の一貫性がない状態が続く、などの症状が挙げられます。
特発性パーキンソニズム
レビー小体は、パーキンソン病における病態要因物質でもあります。
そのため、身体面の症状として、手足の震え、筋肉のこわばり、小刻み歩行など、パーキンソン病の中核症状と同様の症状が現れます。
幻覚症状
レビー小体型認知症の初期段階では、本人がその幻覚を認め、説明することがあります。
幻覚には、聴覚(音が聞こえる)、嗅覚(何かの匂いや味がする)、触覚(存在しないものを感じたり触ったりする)があり、自分と外の世界との境界がはっきりしないことから、周囲の影響を受けやすくなることが危惧されています。
そのほか中核症状
そのほかの中核症状には、「レム睡眠期行動障害」、「抗精神病薬に関する過敏性」などが挙げられます。
レム睡眠期行動障害
レム睡眠行動障害は、レビー小体型認知症の初期症状として生じることがあります。
体は眠っているが、脳は活動をしている浅い眠り期間であるレム睡眠時に、夢を見ているかのように行動し、睡眠中に話したり動いたり過剰な運動をするのが特徴です。
レビー小体型認知症患者の50%以上がこの症状を持っているといわれています。
また、この行動は、レビー小体型認知症が悪化し、他の症状が現れてくると目立たなくなってきます。
抗精神病薬に関する過敏性
抗精神病薬は、幻覚や妄想、うつ症状などに効果のある薬ですが、抗精神病薬の主な薬理作用は、神経伝達物質であるドーパミンを産生する、神経細胞の病的活動を抑制することにあります。
レビー小体型認知症では、ドーパミンを産生する神経細胞が特に影響を受けやすいため、これらの抗精神病薬に対して、副作用が出やすく、過敏性を示しやすいという特徴があります。
レビー小体型認知症では、そのほかにも、自立神経障害、抑うつ状態、起立時の血圧の急激な低下(起立性低血圧)、失神、嗅覚の低下、失禁などの症状が現れることもあります。
3.発症からの平均余命と予後
平均余命
レビー小体型認知症患者の平均余命はさまざまですが、一般的には診断されてから約5~7年といわれています。
参考:Family Caregiver Alliance, 2018.
予後
レビー小体型認知症患者の平均余命は、アルツハイマー型認知症患者に比べて短い傾向にあります。
終末期は、運動機能が著しく低下し、車椅子生活や寝たきり生活を余儀なくされます。
また、免疫力の低下による感染症の罹患や、肺炎により死に至ることが多いとされています。
注意
レビー小体型認知症患者の平均余命は短い傾向にありますが、進行速度は人によって異なり、症状や進行状態による個人差が大きいといわれています。
また、他の認知症で見られるような決まったパターンのステージがありません。
そのため、平均寿命を絶対的な指標として考えるのではなく、包括的な治療計画を立てることで、レビー小体型認知症患者とその家族の生活の質を向上させることができます。
4.レビー小体型認知症の寿命が短い原因
パーキンソン症状に対する治療薬の反応が良くない傾向がある
レビー小体型認知症患者のパーキンソン症状は、パーキンソン病に比べると、治療薬への反応がよくない傾向があります。
例えば、レボドパは、パーキンソニズムの治療に使用されていますが、レビー小体型認知症患者が服用すると、幻覚を増加させ、錯乱や低血圧などの他の症状を悪化させる可能性があります。
副作用が出やすく十分な量の治療薬を服用できない
また、レビー小体型認知症患者は、薬への副作用が出やすいこともあり、十分な量の治療薬を服用することができません。
ハロペリドール、チオリダジン、オランザピン、ベンゾジアゼピンなどの抗精神病薬や、ジフェンヒドラミンなどの特定の抗ヒスタミン薬は、レビー小体型認知症患者に極端な副作用を引き起こす可能性があります。
副作用には、運動症状の悪化、緊張病(無反応)、筋硬直の発生などが挙げられます。
これらの薬剤は、アルツハイマー型認知症において、幻覚、焦燥、行動症状を改善するために使用されることがありますが、レビー小体型認知症患者には使用すべきではないとされています。
そのため、レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症と比べて、精神症状が激しく出やすいことから介護における困難さも示唆されています。
パーキンソン症状に加えて認知症の進行も重なってしまう
パーキンソン病の人は、神経伝達物質であるドーパミンを失い、アルツハイマー病の人は神経伝達物質であるアセチルコリンを失うことが報告されています。
しかし、レビー小体型認知症は、その両方を失います。
そのため、副作用の兼ね合いから薬の服用が難しいことや、それに加えて認知症の進行も重なるなど、複合的要因や治療の難しさから、他の認知症に比べて平均寿命が短い傾向にあります。
5.レビー小体型認知症の経過
レビー小体型認知症の臨床経過は、一般的に「初期、中期、後期」に分けられます。
ここでは、具体的に臨床経過と予後についてご紹介します。
- 初期
-
レビー小体型認知症の初期症状として、妄想、幻覚、抑うつ、不安を呈する症例が報告されています。また、レビー小体型認知症の初期では、「パーキンソニズム」と「レム睡眠期行動障害」の両方が強く発症します。発症年齢が遅いレビー小体型認知症患者では、せん妄(急性錯乱状態)の症状が多く観察され、注意力の低下がみられます。
- 中期
-
レビー小体型認知症の中期では、妄想、幻覚などの症状が顕著になり、日常生活における介助が必要となってきます。また、身体的症状として、パーキンソン症状が強くなり、歩行が困難になる運動障害が顕著に現れてきます。
- 後期
-
レビー小体型認知症の後期では、認知機能障害の低下や、パーキンソン症状がさらに悪化し、失禁や嚥下障害などもみられ、日常生活における介助が必要不可欠となってきます。また、この時期は免疫力もかなり落ちているため、感染症にもかかりやすくなり、最終的に寝たきりの状態となります。
6.まとめ
今回は、レビー小体型認知症の進行状況や寿命、対応方法についてご紹介しました。
レビー小体型認知症は、中核症状である、「認知機能の低下、パーキンソンニズム、幻覚」以外にも、睡眠障害や自立神経障害など、その他の特異な症状が現れるため、他の認知症に比べて介護の難しさが挙げられます。
そのため、家族だけで対応するのではなく、プロに頼ることも必要です。
認知症ケア、施設入居に関するご相談を随時承っております。
以下のリンクより、お気軽にご連絡ください。