2021.12.20
老人性うつは一人暮らしをするとかかりやすい?原因・対応策・認知症との違いを解説
「最近、一人暮らしをしている親の元気がなくて心配……」「親が老人性うつと診断された」
など、老人性うつのことが気になっているかたはいませんか?
老人性うつは、一人暮らしをしていると悪化しやすくなってしまいます。認知症に似ている症状もあり、発見が遅れることも少なくありません。
当記事では、老人性うつがどのような症状を持つのかを紹介していきます。
あわせて、原因や対応策などもご紹介。
老人性うつについて知りたいかたは、ぜひ参考にしてください。
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1.老人性うつの症状
老人性うつとは、65歳以上のかたがかかるうつ病のことです。
認知症と似た症状を持っているため、老人性うつにかかっていることに気付かない場合があります。
症状としては、意欲や思考の低下が見られたり、喜びが感じにくくなったりします。
ただ、ほかの年代がかかるうつ病に比べて、これらの症状は目立ちません。
老人性うつの特徴的な症状として、以下のようなものが見られます。
・ 妄想
・ 不安と緊張
まず、肩こり・頭痛・吐き気などの身体的な不調が見られます。
老人性うつにより引き起こされる身体の不調は、病院で診てもらっても原因が特定できないことがほとんどです。
そして、妄想も老人性うつの症状としてあげられます。
「自分は重い病気にかかってしまった」「罪を犯してしまったので、警察につかまってしまう」「貧困に陥ってしまった」といった妄想をしてしまうのが特徴です。
また、そわそわとした様子が見られる不安と緊張も、症状のひとつといえます。
認知症との違い
老人性うつの症状を見ていくと、認知症と似ている点もあります。
そのため、老人性うつにかかっても認知症と間違えてしまい「認知症になっても仕方のない年だから」と放置してしまうことも。
しかし、老人性うつは認知症とは異なり、治療できるものです。
早期に発見し、適切な治療をするためにも、老人性うつと認知症の違いを知っておきましょう。
老人性うつと認知症の違いを表にまとめたので、参考にしてください。
老人性うつ | 認知症 | |
初期症状 | 身体の不調や抑うつなど | 記憶障害や性格の変化 |
症状の進行 | 短期間でさまざまな症状が見られるようになる | 徐々に進行するため、発症時期がはっきりしない |
自責の念 | 「自分のせいで、周囲の人に迷惑をかけている」といった自責の念を感じる | 自責の念はほぼ見られず、訴えることも少ない |
本人の自覚 | 自分の認知機能の低下を自覚し、気にするようになる | 自分の症状に無関心 |
もの忘れ | 突然、数日前のことを思い出せなくなり、不安にかられてしまう | 症状が徐々に進行していき、自分のとった行動を忘れてしまうなど、物事を忘れてしまう |
会話 | 質問に対して気分が落ちてしまい、はっきりと受け答えができない | 質問に対して見当違いな回答をするが、指摘しても誤魔化そうとする |
攻撃性 | なし | 攻撃的になることもある |
気分の落ち込み | 多く見られる | あまり見られない |
人によって症状も異なりますが、老人性うつと認知症ではこのような違いが見られます。
ただし、老人性うつと認知症が同時に発症していることもあり、見分けられないことも少なくありません。
気になる症状が見られたら、自己判断せずに、まずは医師に相談しましょう。
2.老人性うつの原因
そもそも老人性うつは、なにが原因で発症してしまうのでしょうか。
原因とされるものを2つ解説していきます。
孤独感と喪失感
年を重ねると、若いころと環境が変化していきます。
・配偶者と死別する
・子どもが自分のもとから離れていく
・社会との関わりが少なくなっていく
このような変化により、孤独感と喪失感にさいなまれることも増えてしまうのです。
結果として、老人性うつになってしまうことがあります。
若かったころとのギャップ
「若いころはできたことが、できなくなってしまった」「病気になってしまった」など、高齢になると老いを感じることが増えていきます。
人にもよりますが、若いころとのギャップを感じると落ち込んでしまうこともあるでしょう。
そのため、年齢による身体の変化が、老人性うつのきっかけになってしまうことがあります。
3.老人性うつと一人暮らしの悪循環
一人暮らしをしていると、老人性うつの症状がより悪くなってしまうことがあります。
先ほど、老人性うつの原因として「孤独感と喪失感」があると解説しました。
一人暮らしをしていると、孤独感と喪失感は増していく一方です。
特に、引きこもりがちになってしまうと、社会との関わりが薄くなっていってしまいます。
一人で過ごす時間が多くなり、孤独感や喪失感から生じる心の隙間を埋めることもできません。
一人暮らしをしているかたが老人性うつになると、症状が進行する悪循環に陥ってしまうのです。
4.老人性うつと一人暮らしで生じる問題
高齢者の一人暮らしでは、老人性うつ以外にもさまざまな問題が生じます。
どのような問題が起こり得るのか見ていきましょう。
栄養を十分にとれない
高齢になると、若いころのように料理ができなくなることがあります。
配偶者が亡くなって、料理を作ってくれる人がいなくなってしまうという場合もあるでしょう。
その結果、栄養を十分にとれなくなってしまいます。
きちんと栄養をとらないでいると、体調を崩しやすくなり、老人性うつの悪化の原因になりかねません。
認知症のリスクが上がる
老人性うつと似た症状とされる認知症ですが、一人暮らしをしていると発症しやすくなるとされています。
日々の刺激が少なくなるためです。
一人暮らしの場合は認知症に気付いてくれる人もいないので、いつの間にか症状が進行してしまうことがあります。
詐欺や悪質商法の被害に遭いやすくなる
高齢者を狙った詐欺や悪質商法の被害は、依然として多いものです。
65歳以上のかたが被害に遭う全体に対する割合は、年々増加しています。特に、振り込め詐欺被害の8割が、60歳以上のかたです。
一人暮らしをしていると、本人も気付かないうちに被害にあってしまう可能性があります。
孤独死する可能性がある
一人暮らしをしていて、来客も少ない状況の場合、亡くなってしまっても誰も気付かない可能性があります。
「亡くなってしばらくしてから、誰かに発見された」というニュースを見聞きされたかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
一人暮らしをしていると、このような孤独死のリスクも上がってしまいます。
5.老人性うつと一人暮らしへの対応方法
高齢者の一人暮らしには不安が多くあるでしょう。老人性うつのリスクも高まってしまいます。
最後に、高齢者が一人暮らしする際に生じる問題への対応方法をご紹介します。
食事をサポートするサービスの利用
自分で料理ができない高齢者も少なくありません。そこで活用したいのが民間の宅食サービス。
栄養バランスが考えられたお弁当をご希望の頻度で配達してくれるサービスです。
また、ホームヘルパーやデイサービスといった介護サービスを利用するのもおすすめです。
ホームヘルパーは自宅で食事を作ってくれますし、デイサービスでは食事が提供されます。
さまざまなサービスがあるので、利用しやすいものを選びましょう。
高齢者向けの支援サービスを活用する
自治体で提供されている、高齢者向けのサービスを活用するのもおすすめです。
例えば、安否確認、高齢者サロン、外出の支援、金銭管理といったサービスがあります。
自治体ごとにサービス内容が異なるので、福祉窓口に相談してみましょう。
地域包括支援センターのサポートを受ける
地域包括支援センターは、ケアマネジャー・保健師・社会福祉士などが高齢者のサポートを行なう相談窓口です。
介護・医療・福祉それぞれの専門的なサポートをしてくれます。
「もしかしたら老人性うつかもしれない」
「何をしたらいいのかもわからない」
といった場合でも、気軽に相談してみましょう。
状況に応じて、適切なサービスを紹介してもらえます。
介護施設へ入居する
介護施設へ入居すると、老人性うつの原因である「孤独感と喪失感」の解消が期待できます。
施設のスタッフに毎日声をかけてもらえるようになりますし、入居しているほかの高齢者との交流ができるようになるためです。
ほかにも、施設によって詳細なサービスは異なりますが、施設への入居によって、以下のようなメリットを受けることができます。
<介護施設へ入居するメリット>
- 栄養バランスの良い食事が食べられるようになる
- レクリエーションによる運動ができる
- 犯罪の被害に遭わなくなる
- 孤独死の心配がなくなる
といったように、一人暮らしによる不安も軽減されます。
「老人性うつの予防・改善がしたい」「一人暮らしをさせるのが不安……」といった場合は、介護施設への入居も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
6.まとめ
老人性うつは、高齢になったことによる孤独感と喪失感、若いころとのギャップにより引き起こされてしまいます。
そのため、一人暮らしをしていると悪化してしまうことも。家族でサポートしたり、介護サービスを利用したりして、対応策をとっていきましょう。
また介護施設に入居することも有効です。
状況に合わせた、適切な方法を見つけてくださいね。
まずは気軽に相談してみたいという方は、以下よりお気軽にご連絡をください。