2021.06.22
物忘れがひどくなる食べ物とは?食べ物から認知症予防について考えよう!
皆さんは、アルツハイマー型認知症を引き起こす原因の一つに、食べ物が関与していることをご存知ですか?
認知症の発症は、病的なプロセスの結果だけでなく、日頃の食生活によって身体の防御機構が衰えた結果でもあります。
今回は、認知症の特徴である「物忘れ」と「食事」の関係性、さらに認知症の原因であるアミロイドβについて説明します。
また、物忘れを促進する食べ物・改善する食べ物・予防する食べ物についてご紹介します。
是非、日頃の食卓に取り入れてみてください。
index
1.物忘れ・認知症と食べ物の関係性
どうして食生活を整えることが物忘れ対策に効果的なのか
脳は、全体重の2%しかありませんが、全エネルギーの24%を消費している臓器です。
アルツハイマー型認知症は、脳の記憶や学習を司る部位が機能障害に陥るため、記憶力を保つためには脳の活性化を促すことが必要となります。
脳の活性化は、皆さんが食事から摂取した栄養によって影響を受けるため、食生活を整えることが、物忘れ対策に必要なのです。
認知症予防になぜ食事が重要か
では、なぜ認知症予防に対して食習慣を整えることが必要なのでしょうか。
認知症は、遺伝だけでなく、食事、運動、睡眠などの生活習慣など、環境の影響を受けることが報告されています。
認知症のはじまりともいわれる、中年期(40歳前後)の認知症のリスク要因には、高血圧(最高血圧が130mmHgより上値)や、肥満(BMI30以上)が挙げられます。
これらの原因は生活習慣のなかでも、特に食生活に起因するため、食事をコントロールすることが認知症の予防につながるのです。
物忘れと認知症の原因となるアミロイドβ
アルツハイマー型認知症は、脳内に「アミロイドβ」と呼ばれる、有害なゴミが溜まり、学習や記憶に携わる神経細胞が死に至ることで、記憶を失ったり、思考能力が低下したりする病気です。
この有害なゴミの蓄積は、アルツハイマー型認知症を発症する10〜20年前からはじまっており、アルツハイマー型認知症を発症する頃には、それ以上蓄積しない程度にまで飽和していることがわかっています。
つまり、40代前後から着実にアルツハイマー型認知症の影は忍び寄っているのです。
アミロイドβは、神経細胞の細胞膜にある「アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)」というタンパク質からつくられます。
APPは、通常神経細胞の成長や修復に関わるとされていますが、APPは仕事を終えると、タンパク質を切る酵素によって切断され、アミロイドβとして細胞の外に放出されます。
普段、放出されたアミロイドβは、脳内の掃除役である「ミクログリア」というグリア細胞によって排除されるのですが、年齢を重ねるにつれて、ミクログリアの掃除機能は低下し、脳内のアミロイドβが排除されずに脳内に蓄積されてしまうのです。
蓄積されたアミロイドβは、アミロイドβ同士でくっつきあって、大きな塊になります。
塊になったアミロイドβが神経細胞にまとわりつくことで神経細胞にダメージを与え、最終的に神経細胞死が引き起こされるのです。
その結果、脳内の情報伝達がうまくいかずに、物忘れや記憶障害を引き起こします。
そのため、アルツハイマー型認知症を予防するためには、アミロイドβの蓄積を防いだり、溜まったアミロイドβを排出するミクログリアの機能を高めたりすることが重要となります。
2.物忘れや認知症がひどくなる食べ物
物忘れがひどくなる食べ物一覧
- マーガリン、ショートニング
- ハンバーガーやポテトなどのファーストフード
- ケーキ、スナック菓子などのお菓子類
- コーラ、エネルギードリンクなどの炭酸飲料
- 塩分が多く、味つけが濃い外食
食事によって物忘れや認知症がひどくなる原因
ゴキブリも食べないといわれている、マーガリンやショートニングですが、これらが脳や身体に悪いとされている原因は、これらに含まれるトランス脂肪酸です。
トランス脂肪酸は、植物油を工業的に処理して大量生産したもので、肥満や動脈硬化の原因になることが報告されています。
また、普段からトランス脂肪酸の摂取量が多い人ほど、記憶力が低いこともわかっているため、食生活がもたらすアルツハイマー型認知症の原因の一つともいわれています。
トランス脂肪酸の危険性は世界的にも認められ、FDA(米国食品医薬品局)も2018年からトランス脂肪酸を、全面的に使用禁止にすると報告しています。
ファーストフードは、身体に悪いのは想像できますが、実際に、健康的な食事からファーストフードに食事を切り替えると、たった1週間で、脳の記憶を司る海馬の機能障害を引き起こすことが報告されています。
それだけでなく、ファーストフードは、自制心を損なわせ、食欲暴走効果を示しています。
お菓子類や炭酸飲料に含まれる精製された砂糖も、脳機能を低下させ、アルツハイマー型認知症のリスクを高めることが報告されています。
さらに、塩分が多く、味つけが濃い外食には特に注意が必要です。
塩分を多く摂取すると、体内の炎症が増え、普段、我々の傷の修復を促進し、組織の炎症を抑制してくれるはたらきをもつ、「マクロファージ」という細胞の活性が妨げられることがわかっています。
一方で、塩分の摂取を減らすと、体内の抗炎症サイトカインであるIL-10が増加し、炎症を抑制し、老化抑制効果も示したと報告されています。
塩分の摂取を減らすことで体内の炎症レベルを高めることもきるのです。
物忘れや認知症がひどくなる食習慣の特徴
物忘れや認知症がひどくなる食べ物を紹介しましたが、これらのなかでも特に、「低塩分」を意識する食生活を心がけましょう。
自炊するのが億劫になると、ついスーパーのお惣菜コーナーで3食を済ませたくなります。
お惣菜は一見健康的にみえますが、塩分が多く含まれています。
生活環境や体調によってお惣菜を活用する機会があると思いますが、その際は、食材の組み合わせを考えてみてください。
3.物忘れや認知症に効く食べ物
物忘れや認知症に効く食べ物一覧
- サバ、サンマ、イワシ、マグロ、アジなどの魚類
- 豆腐、納豆、味噌などの大豆食品
- チーズ、牛乳、ヨーグルトの乳製品
- アーモンド、アボカド、バナナ、スイカなど
- ジャガイモ、肉類、卵、シーフード、ピーマンなど
- コーヒー、チョコレート、紅茶、緑茶、赤ワイン、柑橘類など
物忘れや認知症に食事が効く理由
幼い頃から「頭が良くなるためには魚を食べなさい」と言われた方は多いのではないでしょうか。
これは正しく、サバ、サンマ、イワシ、マグロ、アジなどの魚類は、脳にも身体にとっても栄養価が高く、優れた食品です。
栄養価の高さは、魚類に含まれるオメガ3脂肪酸が関わっており、オメガ3脂肪酸のなかでも特に、D H A(ドコサヘキサエン酸)と、E H A(エイコサペンタエン酸)は、脳の神経発達を促す作用が報告されています。
また、豆腐、納豆、味噌などの大豆食品や、チーズ、牛乳、ヨーグルトの乳製品は、必須アミノ酸トリプトファンといって、脳の神経伝達物質であるセロトニンの材料になります。
セロトニンの分泌が増えることで、脳内の神経細胞同士の情報伝達が活発になり、神経細胞から「脳由来神経栄養因子」という神経細胞の成長を促すタンパク質が分泌されます。
脳由来神経栄養因子から影響を受け、海馬などで新しい神経細胞がつくられることがアルツハイマー型認知症の予防に重要だと考えられています。
セロトニンは必須アミノ酸トリプトファンからのみつくられるため、これらの食品を摂取することは大切です。
また、アーモンド、アボカド、バナナ、スイカなどは、必須アミノ酸チロシンといって、神経伝達物質であるドーパミンの原料になり、これらの不足は、認知症の発症に関与しています。
さらに、ジャガイモ、肉類、卵、シーフード、ピーマンなどのビタミンB6類は、ブドウ糖の吸収を助け、神経伝達物質のドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、GABA(ギャバ)、アセチルコリンなどの生産を助けます。
コーヒー、チョコレート、紅茶、緑茶、赤ワイン、柑橘類などに含まれるポリフェノールも、記憶力、思考力を高める効果があります。
物忘れや認知症に効く食習慣の特徴
物忘れや認知症に効く食べ物は、脳だけでなく、もちろん身体にも良い食品として知られています。
これらを摂取することで心身ともに健康になることができます。
しかし、最近では、これらの物忘れや認知症に効く食べ物が「特定の食品が認知症に効果がある! 」とパワーフードのように紹介され、同じ食品ばかりを食べ続けてしまう高齢者の方がいらっしゃいます。
極端な食事法ではなく、多くの食品を摂取することが大切です。
タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルの5大栄養素をしっかり摂取し、バランスの良い食事を心がけましょう。
特に、ビタミン、ミネラルは不足しがちであるため、意識して摂取することが大切です。
➡高齢者が取り入れたい食習慣について詳しく知る
4.まとめ
今回は、認知症と食べ物の関係をご紹介しました。
物忘れに効果的な食べ物と、物忘れを悪化させてしまう食べ物など、日頃から食生活を意識することが、認知症リスクの低下につながります。
また、食べ物との関係以外にも、認知症にはなりやすい人となりにくい人がいます。
認知症や物忘れの予防方法について、もっと詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。