2021.06.16
要介護1の方が一人暮らしを続けるコツとは?認知症の方に適切な対策ポイントまで解説します。
親の介護で、要介護1で一人暮らしをしていてちゃんと生活できているか心配な方もいるでしょう。
要介護1の方であれば介護サービスを利用しながら一人暮らしが可能な場合が多い一方で、病気やケガ、認知症の有無など条件によってはそのまま一人暮らしをさせていいか、心配になるのも無理のないことです。
要介護1で一人暮らしをしている高齢者は、どのような暮らしぶりなのでしょうか。
また、認知症があっても安心して一人暮らしをつづけられるのでしょうか。
今後の親の介護を考えるとき、知っておきたいポイントです。
そこで今回は、要介護1で一人暮らしをする高齢者についてお伝えします。
まず、要介護1とは身体面や精神面でどのような状態なのか、客観的につかみましょう。
そのうえで、要介護1の方と要介護1で認知症がある方、それぞれの一人暮らしのケアプランや対策を学んでいきます。
さらに、要介護状態が進んで一人暮らしの限界がやってきたときの判断基準についても考えます。
住み慣れた自宅で安心して暮らすためのコツや対策を知って全面的にフォローすることは、親の気持ちを尊重する介護をおこなうためとても大切といえます。
しかし、安心安全のためどの段階で一人暮らしから次のステップを考えるべきかといった現実的な課題も意識しておきたいものです。
以下、詳しくご紹介します。
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1.そもそも要介護1とはどんな状態?
要介護度 | 区分の目安(心身状態や介助の必要度) |
要介護1 | ・日常生活で時々介助が必要 ・立ち上がりや歩行時にふらつきがある場合も ・軽度の理解力の低下が見られる |
要介護2 | ・日常生活で動作によって介助が必要 ・立ち上がりや歩行時に介助や福祉用具が必要 ・物忘れや軽度の理解力の低下が見られる |
要介護3 | ・日常生活で一部介助が必要 ・立ち上がりや歩行時に介助が必要 ・入浴は全面的な介助が必要 ・問題行動や理解力の低下が目立ちはじめる |
要介護4 | ・日常生活で介助が必要な動作が多くなる ・食事は一部介助、排泄、入浴などは全面的な介助が必要 ・問題行動や理解力の低下が見られる |
要介護5 | ・日常生活でほぼ全面的な介助が必要 ・歩行や両足による立位保持はほとんどできない ・意思の疎通が取れない |
要介護1は、介護保険制度で認定される介護レベルのひとつです。
要介護1から要介護5まである要介護度のなかで、もっとも低い区分となっています。
このように、5区分ある要介護度は身体の状態と必要な介護の時間に応じて要介護1から要介護5に向かいレベルが高くなっていきます。
要介護1の場合、日常生活の大半は本人が自分でできる一方で、介助が必要なときもあります。
とくに立ち上がりや歩行時に安定感がなくふらつく方が多いのでサポートが必要です。
このほか、急に感情的になったり、込み入った話を理解できなくなったりする方もいます。
認知症がある場合は?
認知症は、要介護1に認定される主な原因のひとつです。
厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査の概況」によると、要介護1になる原因の第1位は認知症で29.8%、第2位は脳血管疾患(脳卒中)で14.5%、第3位は骨折・転倒で12.0% とつづきます。
認知症が主な原因で要介護1に認定された方でも、発症初期の場合は食事や排泄といった日常生活の基本的な動作にほとんど問題はありません。
➡認知症の進行について詳しく知る
2.要介護1の方の一人暮らしとケアプラン・対策
ここからは、一人暮らしで要介護1の方がどのような介護サービスを受けられるのか、ケアプランや気をつけたいポイントを見ていきます。
要介護1の方が利用できるサービス
要介護の方が自宅で利用できる訪問介護サービスには次の3つがあります。
訪問介護サービスの種類 | サービスの内容 |
身体介護 | 利用者の自宅などで本人の身体に直接触って介助をするサービスのこと 例)食事介助、入浴介助、排泄介助など |
生活援助 | 利用者の代わりに日常生活の家事をおこなうサービスのこと 例)食事の準備、掃除、洗濯、買い物代行、薬の受け取り |
介護保険タクシー | 通院などで乗車時や降車時の介助を受けながらタクシーや福祉車両で移動すること (介護職員初任者研修以上の資格を持つ運転手) |
こうした訪問介護サービスをうまく組み合わせて利用することは、一人暮らしの要介護の方が安心して自宅で暮らすベースになります。
➡介護タクシーについて詳しく知る
要介護1の方向け一人暮らしのケアプラン
要介護1の方向けの、一人暮らしのケアプラン事例を紹介します。
Aさんは72歳の女性で、一人暮らし。
長男と同居、長女は県内で生活。
3年前に要介護状態だった夫が死去。自身も脳血管疾患の既往歴があり、介護が必要な状態です。
~日中の過ごし方~
日中、テレビを見て過ごす時間が長く、ひとりで外出することはありません。
外出をはじめ友人知人と遊ぶこともほとんどないので、社会的に孤立感が強まっています。
入浴や着替えもおっくうで、やりたがらないほか、昼夜逆転になっていて生活リズムも乱れています。
社会とのコミュニケーションが極端に減っていること、日中の活動量が減少していることから、ロコモティブシンドローム(運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態)や認知症予備軍の心配が高くなっています。
~ケアプランのポイント~
ケアプランでは、外出の機会を増やすため訪問介護サービスのなかで買い物同行を重視。
ヘルパーと一緒に近所のスーパーまで週1回のショッピングを楽しむようになりました。
また、外出したがらないため、デイサービスの利用は週1回からスタート中です。
高齢者の一人暮らしで必要なもの
高齢者の一人暮らしで必要なもの、あると便利なものを考えてみます。
生活上必要なもの
- 1.福祉用具
立ち上がりや歩行を助ける補助具や手すり、身体状態によっては歩行器が必要です。
- 2.ベッド
できるだけリクライニングができる介護ベッドが理想です。ベッドは起居がしやすく介護もしやすいため、一人暮らしの高齢者には欠かせません。
注意:要介護1だと基本的にレンタルできません。レンタルの場合は自費になります。
- 3.食事
調理器具をそろえて日々の食事を用意します。食事の用意がしづらくなっている場合は、ヘルパーの調理介助、高齢者向け宅配弁当サービスなどをうまく組み合わせて、低栄養状態を防ぎます。
➡高齢者が取り入れた食習慣について詳しく知る
- 見守りサービス
警備会社や自治体がおこなっているさまざまな見守りサービスを利用すると、安心して暮らせます。防犯や急病時に駆けつけてくれるサービスも検討してください。
高齢者が一人暮らしを続けるコツと対策
高齢者が一人暮らしを続けるには、ちょっとしたコツを意識して生活するのがおすすめです。
・コツ1 できるだけ外出する
心身状態が衰えると、外出がおっくうになって日中をずっと家で過ごすようになります。
身体機能が低下するばかりか、人とのコミュニケーションを取らないとメンタル面での不調にもつながります。
買い物に出かけたり、デイサービスを利用したり、外出の機会を増やしましょう。
- ・コツ2 誰かに助けてもらう
すべてひとりでやらなければならないと思わないことが大切です。
たとえば、食事の用意にしても、年齢や体力とともに、簡単なもので済ませがち。
粗食がつづくと栄養のバランスも悪くなり、健康面に悪影響をおよぼします。
もし、じぶんで調理や配膳がおっくうになったら、ヘルパーを利用したり、スーパーの惣菜を活用したり、宅配弁当サービスを組み合わせたりして、栄養面にも注意しましょう。
- ・コツ3 手間のかからない家電を使う
最近の家電は、メンテナンスに手間がかからなかったり、自動で運転してくれたりする商品が増えています。
長寿命のLED蛍光灯やフィルター掃除が不要なエアコンは、定期的なメンテナンスがいらないのでおすすめです。
3.要介護1 認知症がある場合の一人暮らしとケアプラン・対策
ここからは、要介護1で認知症がある高齢者の一人暮らしについて考えます。
一人暮らしで認知症になった場合に利用すべきサービス
一人暮らしの認知症の方が特に利用したほうがよい訪問介護サービスの種類を見ていきましょう。
- ・買い物代行
食材の調達に困らないように、ヘルパーが代わりに買い物をして来ます。
- ・見守り介助
生活で支障はないか、徘徊がないかなど、見守りや定期的に声掛けをします。
- ・清掃介助
片付けや掃除が難しくなった方に代わって、住まいの衛生環境を整えます。
要介護1認知症の方向け一人暮らしのケアプラン
ここでは、要介護1の方向け一人暮らしのケアプラン事例を紹介します。
70歳男性。
2年前に脳血管疾患を発症。後遺症で軽度の認知症の症状が見られます。
~日中の過ごし方~
自立して生活したいという意欲が強いため、物忘れや複雑な内容の理解が難しいものの、大きな問題はありません。
ただし、通院時、医師の診察内容や窓口での支払い、調剤薬局での服薬指導などで理解が難しくなっています。
日常生活では、外出機会の減少、薬の飲み忘れといった認知症初期の患者が直面しやすい問題が発生していて、本人や家族も改善したいという希望です。
~ケアプランのポイント~
ケアプランでは、外出して人的コミュニケーションが図れるように、週に3回のデイサービスを提案。通所介護の日は、昼食や入浴の心配がないので栄養面や衛生面でプラスに働きます
要介護1 認知症の方が一人暮らしを続けるコツと対策
- ・対策1 服薬介助に力を入れる
短期記憶に障害の出る認知症患者にとって、薬の飲み忘れはよく起こる課題です。
服薬で治療を進め、体調を維持しているため、飲み忘れると心身状態の低下につながって、日常動作やメンタル面での支障をもたらします。
ヘルパーによる服薬介助のほか、デイサービスなど介護事業所によっては薬の飲み忘れがないか電話で確認する見守りサービスもあるので積極的な利用が望ましいでしょう。
- ・対策2 嚥下機能の低下に注意
認知症の進行とともに、物を飲みこむ力、いわゆる嚥下機能が低下していきます。
飲食時にむせやすくなるため、本人にあわせた食事の工夫が必要です。
やわらかめの白米やおかゆ、良く火を通してやわらかくした副菜を中心に献立を工夫することも大切となります。
また、調理のときも、食材を一口大より小さめにカットするのも嚥下障害を防ぐのに役立ちます。
- ・対策3 入浴や歯みがきで衛生面を維持
認知症の症状が強くなると、入浴がおっくうになったり、歯みがきが面倒になったりして、整容に気を使わなくなりがちです。
髪型や服装がぞんざいになって不潔な状態がつづくと、感染症や病気のきっかけにもなりかねません。
入浴や歯みがき指導のあるデイサービスを積極的に使ってみる、ヘルパーによる入浴介助や更衣介助、歯みがきの声かけといったサービスも検討してください。
- 対策4 冷暖房設備を整える
加齢や認知機能の低下によって、皮膚感覚が衰えると気温の変化を感じづらくなります。
また、室内が高温状態もしくは冷温状態になっても冷房や暖房を使用する意識がなかったり、使い方がわからずそのまま過ごして体調を崩したりするケースが多くあります。
とくに認知症の高齢者の一人暮らしでは、冷暖房設備を設置するのはもちろん、適切に使用しているか見守る必要があります。
4.高齢者・認知症の方の一人暮らしと限界の判断基準
「いつまでも自宅で暮らしたい」
そんなシニアの希望に応えたくても、このまま一人暮らしをするのは難しい場面がやって来ることもあります。
ここからは、一人暮らしの高齢者や認知症の方が、家族との同居や介護施設の入居を考えるべき段階について考えます。
QOLが著しく低下している場合
一人暮らしにおいてQOLが著しく低下しているとはどのような状態を指しているのでしょうか。
本人の日常生活全般で「生活の質」が低下するとは、
- ・身体機能の低下によって自分ひとりで買い物や通院ができなくなった
- ・外出や友人知人とのコミュニケーションが取れなくなった
- ・体調が悪化して、自宅内で転倒や失神などが増えてしまった
といったケースが考えられます。
QOLが低下している場合、一人暮らしの限界があるといえるでしょう。
➡QOLについて詳しく知る
あわせて、歩行や入浴、更衣など、日常生活での自立度をはかるADL(日常生活動作)も確認する必要があります。
認知症の方の場合
認知症の高齢者は、これまで難なくできていた日常生活での以下のような動作が難しくなっていきます。
- ・調理
- ・食事
- ・入浴
- ・排泄
- ・更衣
- ・洗濯
- ・買い物
排泄ひとつとっても、トイレに行ってお尻を拭くのを忘れたり、水を流し忘れたりといった基本的な動作が抜けていくのです。
一人暮らしの認知症の方が日常生活全般でこうした認知機能の低下が起こると、生活そのものに支障を生じます。
デイサービスやヘルパーなど訪問介護サービスを組み合わせても日常生活を送りづらくなったときは、一人暮らしから老人ホームへの入所などを考えるべきでしょう。
5.まとめ
在宅介護でも、老人ホームに入所する場合でも、介護にはまとまった費用が必要です。
介護保険サービスでは月々の自己負担額に上限が決められているものの、保険外の費用もあります。
親自身で介護費用が払えない場合は、子供がカバーしなければならない場面も出てきます。
親の介護は近い将来、避けては通れない家族の問題です。
介護費用をどうやって払っていくのか、ふだんから両親や兄弟姉妹と話し合っておきましょう。
また、介護費用のデータを参考に、おおよそのマネープランを立てるのも重要です。
要介護1の高齢者であっても、デイサービスやヘルパーなど訪問介護サービスを利用しながら一人暮らしをつづけている方はたくさんいます。
本人の希望や心身状態、日常生活の状況にあわせたケアプランがあれば、日々安心して暮らせるものです。
しかし、要介護1であってもQOLやADLが低下したり、認知症の症状が進行したりした方は、一人暮らしが限界になるタイミングが訪れることがあります。
そんなときは、本人やケアマネジャーなどと相談しながら、介護施設の入所を検討するのも選択肢になるでしょう。
高齢者が安心して暮らせる老人ホームは規模もタイプもさまざまです。
介護施設にはどんな種類があるか、ぜひ一度検索してみてください。