2021.07.16
初めての自宅介護!知っておきたい基本の費用やサービスをご紹介
初めて自宅で高齢者を介護するとき、悩みや不安でいっぱいになります。
でも介護保険などのサービスを上手に利用することで、その問題は少し解消されるかもしれません。
今回は、在宅介護を行なう上でおさえておきたい基本的な費用やサービスについてご紹介します。
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介護の仕方は大きく2つに分かれる
介護は「在宅介護(居宅介護)」と、「施設介護」の2つに分かれます。
施設介護は、プロがお世話をしてくれるので安心できますが、自宅で高齢者を介護する場合、家族だけですべてやろうとすると、介護される側にもする側にもストレスが溜まりうまくいかなくなってしまうこともあります。
自宅での介護は、介護保険で利用できる「訪問介護サービス」などを上手に利用して、「無理しない介護」を目指すことが大切です。
自宅での介護でかかる費用は?
自宅介護を考えるとき、気になる費用の問題。どのくらいかかるのでしょうか?
施設介護でかかる費用
自宅介護でかかる費用を見る前に、まず、施設での介護でかかる費用を見てみましょう。
例として要介護5の人が、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入った場合、1ヶ月の自己負担額の目安を表-1にまとめてみました。
希望する施設の形態や、多床室か個室かなどの環境によっても月額の利用料は変わってきます。
さらにくわしく知りたい人はこちらの記事も参考にしてみてください。
➡親の介護費用は誰が出す?介護にかかる費用の平均を紹介
表-1 要介護5の人が多床室を利用した場合 | |
施設サービス費の1割 | 約25,000円 |
居住費 | 約25,200円(840円/日) |
食費 | 約42,000円(1,380円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます。) |
合計 | 約102,200円 |
出典:厚生労働省 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の1ヶ月の自己負担の目安
在宅介護でかかる費用
在宅で介護する場合は、施設でかかる費用のうち「施設サービス費の1割」や、「居住費」などは必要ありません。また食費も工夫と手間をかければ節約することは可能です。
紙おむつも意外と大きな出費のひとつですが、市区町村によっては「おむつ使用料の助成」などを行なっているところもあるので福祉課などに問い合わせてみるといいでしょう。
・介護保険の居宅サービス料金
日常生活でかかる費用のほかに、介護保険の居宅サービスを利用する人は、この料金がかかります。
介護サービスは、そのサービスごとに利用料=介護報酬単位数が決められており、1単位は10円で計算されます。
さらに、お住いの地域によっては地域区分によっても変わってきます。
介護区分によって月々使える金額の限度額(表-2参照)が決まっていますが、全額支払う必要はありません。
限度額内で使った料金のうち1割(一定以上の所得の場合は2割、3割)を負担すれば良いので、月額にかかる介護保険サービスの費用は5千円~3万6千円ぐらいです。
表-2 介護区分によって月々使える金額の限度額 | |
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
参照:厚生労働省 令和元年度介護報酬改定について
やはり、在宅介護のほうが費用を抑えられます。
しかしその分、介護の負担は介護する人や同居家族にかかってきます。
自宅で介護するときの不安や悩みにはどんなものがあるの?
自宅で介護するとき、介護する側の家族にかかる負担や抱く不安、悩みにはどのようなものがあるでしょうか。
食事、入浴、トイレをサポートするときなどの肉体的な負担
介護される高齢者が、「少し手をかせば日常生活は送れる」くらいの状態なら介護もそれほど大変ではありません。
しかし、例えば脳梗塞などで、一日のほとんどをベッドの上で過ごす状態や、半身麻痺などになった場合、着替えや食事など日常生活のお世話は大変です。
介護するのが子ども世代でも50代を越えるようであれば、肉体的にも厳しいものがあるようです。
同居の主な介護者の性・年齢階級別構成割合
出典:厚生労働省2019年国民生活基礎調査の概要 『同居の主な介護者の性・年齢階級別構成割合』
70歳以上で家族を介護している人は、男女それぞれ40%以上と高い数字になっています。この数字からも老老介護世帯が多いことがわかります。
配偶者が寝たきりになるなどして、家事などの負担が増大すると、介護する側の年齢に伴う健康不安や、過労、ストレスなどで共倒れのリスクも高まります。
老老介護の問題についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
➡老老介護・認認介護の現状。問題点と対策を知って、共倒れを防ごう!
家族以外の人が自宅に出入りするため、プライバシーが不安
在宅介護をしながら、介護保険サービスでヘルパーなどを要請すると、家族以外の人が自宅に出入りする機会が増えます。
さらに訪問医療が必要な場合は、往診などで看護師、薬剤師、医師などが頻繁に訪れることもあります。
もちろん、守秘義務やモラルをもって、業務にあたってくれている人々ではありますが、家族以外の人が家の中をうろうろする、という環境にストレスを感じる人も少なくありません。
在宅時や、外出時の呼び出しなど、介護による時間的な拘束
出典:厚生労働省2019年国民生活基礎調査の概要『要介護度別にみた同居の主な介護者の介護時間の構成割合』
要介護度が「要支援1」や「要支援2」程度の高齢者は、必要なときに手を貸せば、あとのことは自分でできる人も多いため、数時間ぐらいなら、外出することも可能です。
しかし介護度があがるにつれてサポートすることが多くなるため、介護する側が備えていなければならない時間は長くなります。
介護度があがると同時に、離れているときに呼び出される回数も増え、そのことを悩んだり、ストレスを感じたりする人もいます。
また通院は、高齢者にとって日常ともいえる行動になります。しかし、介護度があがるにつれて、家族が病院や薬局へ付き添うことになり、時間的に拘束されます。
介護する人の多くは、自分のことをする、自分のための時間がなかなか取れない、という悩みを抱えているようです。
認知症、せん妄、徘徊などがはじまり、介護者は不安になる
認知症の周辺症状の、せん妄や徘徊がはじまると、家族はますます高齢者から目が離せなくなり、介護する家族にも疲れがたまります。
にもかかわらず、ご本人にそうした記憶がないとなると、そこから軋轢がうまれることもあるようです。
認知症についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
➡認知症の方が物事を忘れる順番は? 認知症進行への対応ポイント3つをご紹介
➡プライドが高い言動が出てしまう認知症のかたへの5つの対応。プライドの高さには個人差が出る原因とは?
➡認知症は何歳から? なりやすい人、なりにくい人の違いや特徴を知る
在宅介護をしていると感じる、いろいろな不安や悩み。
そうした問題を解決するために、介護保険のサービスや、福祉用具、便利グッズを上手に活用しましょう。
どんなものがあるのか、具体的に見てみましょう。
環境を整えよう!介護に適した改修、リフォーム
介護をしやすく、あるいは高齢者に安全な住環境を整えるための住宅改修には、介護保険で補助金が支給されます。
自宅に手すりやスロープなどを取り付けると、高齢者が一人でトイレに行くのも、介護する方が入浴の介助をするのも楽になります。
転倒防止にもなるので、高齢者にとっても、介護する人にとっても安心、安全な住環境が作れます。
介護保険における住宅改修の補助金は?
適用対象となるものには以下のようなものがあります。
<住宅改修の適用対象一覧>
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
- その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
補助金の対象となる工事費用の限度額は20万になります。
支給される金額は、工事費用の9割です。たとえば20万円のリフォームを行なった場合、9割にあたる18万円が補助金として支給されます。
リフォーム工事が20万を超える場合、オーバーした金額については自己負担です。
住宅改修の補助金は、要支援、要介護の区分にかかわらず申請することができますが、一人、原則1回まで。
ただし要介護状態の区分が3段階以上あがったり、転居したりした場合は、再度20万円まで支給限度基準額が設定されます。
自宅介護で必要なもの、便利なグッズをご紹介
ここでは自宅介護を行なう際に揃えておくと便利なグッズや福祉用具を紹介します。
車いすや介護用ベッドなどの高額な用具は、介護保険を使えば月々数百円~数千円でレンタルができるので、購入するよりお得に準備することもできます。
介護保険を使って貸与できるもの
介護保険を使えば、福祉用具のレンタル料金のうち9割(一定以上所得がある人は8割または7割)が補助金の適用になります。
ただし介護度によっては、自己負担でのレンタルとなるので高額になったり、地域によって扱いがないもの、また保険支給限度額が決まっているのでその範囲内で利用ができるかなどいろいろと制約があります。
「利用したい」と思ったら、まずはケアマネジャー(介護支援専門員)に相談してみましょう。
対象となる福祉用具 | |
特殊寝台および付属品 | 床ずれ防止用具 |
体位変換器 | 手すり |
スロープ | 車いすおよび付属品 |
歩行器 | 歩行補助杖 |
移動用リフト | 徘徊感知機器 |
自動排泄処理装置 |
毎日のお世話にあると便利なグッズ
日々の介護に役立つ便利なグッズもたくさんあります。
その一例を紹介します。
いつも使うおしりふきや消毒などは、ワゴンに置いておくと、とっさのときにすぐに使えるので便利です。
<便利グッズ一覧>
- 使い捨て用品
ウェットティッシュ、おしりふき、医療や介護で使われる使い捨ての手袋、大きめのビニール袋、ガーゼ、キッチンペーパー
- 衛生用品
消毒・徐菌用ハンドジェル、消毒・徐菌スプレー、消臭剤・脱臭剤
- 便利グッズ
S字フック、曲がるストロー、薬を小分けにできるケース
- こんなものも用意しておくと大活躍
洗面器、座布団やクッション、古くなったタオルや布
その他にもいろいろな工夫をされている方もいらっしゃいます。
一度介護をしている方のブログなどを見てみて、ご自身の介護生活に便利そうなものがあったら、取り入れてみてはいかがでしょうか?
➡介護ブログおすすめランキング~家族介護から介護職員、認知症当事者まで~
訪問介護、ヘルパー支援など 介護保険サービスを活用しよう
介護保険を利用して受けられる支援は全26種類54サービスがあります。
自宅介護で利用できるサービスも、自宅に来てお世話してくれるヘルパーの要請から、高齢者が施設に行くデイサービスまでいろいろあるので、ぜひ参考にしてみてください。
自宅で受けられるサービス
サービス内容 | 利用可能な 介護認定区分 |
|
訪問介護 | 訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し介護する ・身体介助 食事・排泄・入浴などを中心にケアしてくれる。 ・生活援助 掃除・洗濯・買い物・調理などの生活面を支援してくれる。 |
要介護1~5 |
訪問入浴 | 看護職員と介護職員が利用者の自宅を訪問し、入浴の介護を行なう。 浴槽は持参するので、特にお風呂の準備をする必要はない。 |
要支援1~2 要介護1~5 |
訪問看護 | 主治医の指示で、疾患のある利用者の自宅を看護師が定期的に訪問。 〈受けられるサービス〉 ・血圧、脈拍、体温などの測定、病状のチェックなど ・排泄、入浴の介助、清拭、洗髪など ・在宅酸素、カテーテルやドレーンチューブの管理、褥瘡の処理、リハビリテーションなど ・在宅での看取り |
要支援1~2 要介護1~5 |
訪問リハビリ | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが利用者の自宅を訪問し、リハビリテーションを行なう。 | 要支援1~2 要介護1~5 |
夜間対応型 訪問介護 |
夜間帯に訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問。 〈定期巡回〉 夜間帯(午後6時~午前8時)に定期的に訪問し、排泄の介助や安否確認など行なう。 〈随時対応〉 体調不良やベッドからの転倒などの緊急時、救急車の手配などを行なう。 |
要介護1~5 |
定期巡回・ 随時対応型 訪問介護看護 |
24時間365日、定期的な巡回や随時通報で自宅を訪問。訪問介護員だけでなく看護師などとも連携し、介護と看護の両方の面でサポート。 | 要介護1~5 |
このように昼間だけでなく、夜間にも対応してくれるサービスもあるので、上手に利用するとケアする家族も体力、時間ともに負担が軽減されそうです。
ただし介護保険の支援は、「利用する人が、できるだけ自宅で自立した日常生活を送ることができることを目的としたもの」であることはお忘れなく。
利用者の家族のための家事や、日常生活の援助の範囲を超えるサポートはできないので注意しましょう。
➡介護ストレスや疲れで病気に?ストレスの原因・症状と3つの解消法
自宅から施設に通って受けられるサービス
デイサービスなど自宅から施設に通って受けられるサービスも多数あります。
サービス内容 | 利用可能な 介護認定区分 |
|
通所介護 (デイサービス) |
利用者が通所介護の施設に日帰りで通い、食事や入浴。生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスが受けられる。 | 要介護1~5 |
通所リハビリ | 通所リハビリテーションの施設(老人保健施設、病院、診療所など)に利用者が日帰りで通う。 〈共通的サービス〉 生活機能向上のための機能訓練 〈選択的サービス〉 運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能の向上。 「共通的サービス」にプラス、利用者の心身の状態によって「選択的サービス」を組み合わせることが可能。 |
要支援1~2 要介護1~5 |
地域密着型 通所介護 |
地域密着型の通所介護施設に日帰りで通い、日常生活の支援や、生活機能向上のためのサービスが受けられる。 | 要介護1~5 |
療養通所介護 | 難病、認知症、脳血管疾患後遺症等の重度要介護者又はがん末期患者を対象にしたサービス。医師や訪問看護ステーションと連携し、食事や入浴のほか機能訓練、口腔機能向上サービスなどが受けられる。 | 要介護1~5 |
認知症対応型通所介護 | 認知症の利用者が通所介護の施設(デイサービスセンターやグループホームなど)に通い、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを受けられる。 | 要支援1~2 要介護1~5 |
どのサービスも自宅から施設までは送迎があるので、介護する人が付き添う必要はありません。
施設に通う目的は生活支援や機能向上などですが、一番のメリットは家にこもりがちの高齢者が、家族以外の人と交流することで、気分転換になるということです。
また介護する人も、高齢者が出かけている間は、自分の時間として好きなことができるのでリフレッシュできます。
介護保険サービス以外の支援
民間でも家事を代行する業者や、食事を定期的には運ぶ宅食サービス、訪問美容院などがあります。
介護保険の支援よりは割高ですが、介護保険では対応できない部分をサポートしてくれます。
こういうサービスも上手に取り入れて、介護する人の負担を少しでも軽減する工夫も在宅介護には大切です。
介護保険サービスを使うためには
在宅介護の不安や悩みなどを解消するには、介護保険で受けられるサービスに頼るのがいいということがわかっていただけたでしょうか。
ではこの支援を受けるにはどうしたらいいのでしょうか?
まずは介護保険の「要介護認定」を受ける必要があります。申請からサービス開始までの流れをみてみましょう。
地域包括支援センターに相談
お住いの市区町村役所の福祉相談窓口か、地域包括支援センターに行き、介護保険サービス利用について相談しましょう。
要介護認定の申請に必要な書類や、手続きの流れなどを教えてくれます。
要介護認定
申請手続きをしたあとは、市区町村等の調査員が訪ねてきて、心身の状態を確認するための認定調査を行ないます。
それと同時に、主治医の意見書も市区町村が依頼します。このとき主治医がいない場合は、市区町村の指定医の診察が必要になります。
この2つの審査が終了すると、2段階の判定に入ります。
- ・一次判定
-
調査結果と主治医意見書をコンピューターに入力して、全国一律の判定方法で要介護度の判定が行なわれます。
- ・二次判定
-
一次判定の結果と、主治医意見書に基づき、介護認定審査会による要介護度の判定が行なわれ介護認定の区分が認定されます。
要介護認定については、こちらの記事も参考にしてください。
➡要介護認定を受けるには?認定基準や調査項目、更新方法
ケアプランを組む
介護認定が決定すると、その区分で受けられる支援のなかから、いつ、どんなサービスを受けたいかを具体的に本人、家族、ケアマネージャー(介護支援専門員)とともに話し合います。
それを基にケアプランが作成され、サービスの利用が開始されます。
ケアプランについては、こちらの記事も参考にしてください。
➡ケアプランとは?短期・長期目標の意味、作成の仕方と流れ
がんばりすぎない、無理しない 自宅での介護
住み慣れた、思い出のたくさんある自宅で、人生の終盤の時間を長く過ごせることは、高齢者にとって幸せなことです。ただそのために、家族に必要以上の負担がかかり、関係がぎくしゃくしてしまったり、介護する側が体調を崩したりしてしまっては、元も子もありません。
自宅で介護をするのであれば、介護認定を受け、無理せず上手に介護保険サービスを活用しましょう。
また介護されるかたの状態、介護する側の状況は日々変わっていきます。ケアマネジャーに相談しながら、最適なサービスを受けましょう。
自宅での介護の継続が難しいとなったら、施設への入居を考えてみるのも良いでしょう。
介護する人も、される人も、ストレスを溜め込まず無理なくいきいきと最後まで暮らすことが大切です。
介護する方のお悩みには、こちらの記事も参照してみてください。
➡介護ストレスや疲れで病気に?ストレスの原因・症状と3つの解消法